ヤマハが「楽器と無関係」のゴルフに参入した理由 2008年から女子プロのトーナメントをスタート

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カーボン繊維は強度が高いが、折れやすく扱いが難しい。この材料を使って世界で初めてゴルフクラブヘッドの開発に成功したのだ。ゴルフ業界は、ヤマハがカーボン製のクラブヘッドを作ると明言したことに、衝撃が走った。

1980年代まで、クラブヘッドの素材としてはパーシモン(柿の木)製が主流だった。パーシモンは天然素材であるため、品質にばらつきがあるなどの問題点があった。また、素材が木であるため、設計自由度が少なく、新しい機能を入れることができなかった。

まさにこの時期は、世界各国のゴルフメーカーが次のクラブヘッドの素材を探索していた時代。

アメリカのテーラーメイド社がメタルでクラブヘッドを製作したこともあったが、当時の製造技術では性能面でパーシモン製を超えられなかった。そんななか、クラブヘッドの次の素材として注目されていたのが、カーボンだった。

まっすぐ飛び、飛距離も出る

高比強度(密度あたりの引っ張り強さを表した指標で、値が高いほど軽くて強度が高い材質になる)で、軽くて強いという特性を持つカーボン繊維に、別の素材を合成させたカーボンコンポジットを使用することで、軽くて強い素材の特性を生かしつつ、ヘッドを大きくすることが可能になった。

それにより、まずボールが飛ぶ方向の安定性が向上。パーシモンに比べて反発性も優れているので、飛距離アップも期待できた。また、ヘッド本体が軽くなったぶん、重さを金属などの重りで調整するなど設計自由度が高くなり、これも大きなメリットだった。

ヤマハの発表を受けて、他のゴルフメーカーもカーボンウッドを発売することを公表した。

例えば、ミズノはヤマハの発表の4カ月後、ダイワ精工は5カ月後にカーボン製のゴルフクラブの発売を発表した。当時のミズノのゴルフ事業部長は、「負けたらあかん! 発売はこちらが1番を取るんや!」と社員に檄を飛ばしたという。

ヤマハのゴルフクラブは11月に発売された。値段は10万円程度と高めだったが、ヒット商品となり、初年度は20億円以上を売り上げた。

クラブヘッドの素材は、やがてパーシモンが消え、メタル、カーボン、チタンと変わり、現在ではカーボン素材とチタンを組み合わせた複合素材のヘッドが主流となっている。

前出のテーラーメイド社は、カーボン素材をフェース(ボールが当たる面)に使用していることを売りにしたゴルフクラブを、アメリカ・キャロウェイ社は、ボディの全面にカーボン素材を使用しているゴルフクラブを、相次いで発表した。

現在のヤマハのクラブについて、ゴルフ業界のBtoBの月刊誌『GEW』を発行するゴルフ用品界社の浅水敦専務は、「テーラーメイド、キャロウェイなどの海外ブランドが強いなか、国内メーカーとして、数年前に開発センターを浜松に新規でオープンさせ、新しいコンセプトのアイアン、フェアウェイウッドなどをヒットさせている」と評価する。

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