未曾有の危機に立ち向かう再生可能エネルギーの未来《4・最終回》エネルギーシフトの実現に向けた挑戦が始まる
筆者はここ15年ほど環境やエネルギー問題に携わってきたが、日本のエネルギー戦略にこれだけ人々の耳目が集まったのは初めてのことかもしれない。枯渇性エネルギーから再生可能エネルギーへ軸足を移すことを目指す「エネルギーシフト」という言葉もよく聞かれるようになった。最終回では、日本の抜本的なエネルギー戦略の見直しを指すこの「エネルギーシフト」の実現に何が必要なのかを検証する。
できない理由ではなくできるための方法を考える
菅直人首相は原発を柱とした既存のエネルギー基本計画を抜本的に見直し、段階的な脱原発と再生可能エネルギーの拡大、省エネの推進を明言している。まさに「エネルギーシフト」そのものだが、その実現には日本のエネルギー構造の抜本的な改革が必要であり、決して簡単な道ではない。だが、まずは確固たる方向を示すこと、そのうえで「できない理由」ではなく「できるための方法」を考えていくことが重要である。
再生可能エネルギーが「普及しない」理由はいくらでも挙げられる。導入可能量が限定的、安定供給が難しい、コストが高いなど、確かに再生可能エネルギーは決して救世主ではない。風力や太陽光を最大限導入したところで、現在の電力使用量をすべて賄うという夢物語は到底描けない。
かといって、食べ物、飲み物、子供の遊び場までに気を使わなければ生活できない状況をもたらした原子力発電を、われわれは今後もエネルギーの主軸としていきたいのだろうか。今回の事故をきっかけに、多くの人が原発からの脱却方法を模索し始めたのは明らかだろう。だが、その道筋は見えない。