希代の起業家が伝授「新規事業の成功」見極める技 その提案は多くの人の「痛み」に寄り添えているか
この道筋に従ったうえで、解決策が最終的に機能するものとなったら、価値を生み出せる。その価値が旅の本質となる。
しかし、解決策からはじめると、誰にも気にかけてもらえないものを作ってしまう危険がある。そこに労力や時間、お金を注ぎ込んでしまうと、がっかりするはめになるのは間違いない。
実際のところ、多くのスタートアップが消える理由は、PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成できないからだ。PMFを達成できない理由は、問題ではなく解決策にばかり目を向けているからなのだ。
問題からはじめる理由は、価値を生み出せる可能性が高くなる以外にもたくさんある。1つは、起業家が紡ぎ出すストーリーが、ずっとシンプルで人の心をつかむものになるからだ。
ストーリーを聞いた人は、起業家が抱く不満を理解し、共感してくれるようになる。
「問題に恋する」ことで生まれる魅力的なストーリー
問題に恋をしている会社は、「この問題の解決に向けて、前進しているか?」と、日々自らに問いかける。「これが私たちの解決する問題です」とストーリーを語り、さらにすばらしい場合には、「私たちは、◯◯な人が、□□の問題を避ける手助けをします」と、ターゲットや問題をさらに絞り込んでいる。
その一方で、解決策に集中している会社は、「私たちのシステムは……」、あるいは、「当社は……」からストーリーを語り出す。
自社に焦点を当てると、ユーザーにつながりを感じてもらうのは非常に難しい。だが、ユーザーや問題に焦点を当てたストーリーを語ると、簡単につながりを感じてもらえる。
人は変化を恐れる。自分が長いあいだ温めてきたアイデアなら、その構想についてよく考え、掘り下げていくだけの時間はあるが、ほかの人からすれば真新しいアイデアだ。
とくに初めての起業で、まだ知名度がない場合、思いもよらない変化をもたらす提案が、否定的な反応を引き起こすことがある。人がアイデアを心地よく感じるまでには、時間がかかる。
起業とは、がむしゃらに信じることだ。犠牲を払う覚悟がないなら、つまり、今の給料や境遇、役職が手放せないなら、あなたは十分恋に落ちていない。趣味やスポーツがやめられないなら、スタートアップの旅を続ける注意力は保てない。