津波浸水対策は万全か、動きだす災害拠点病院
大規模な自然災害から医療施設を守る──。
東北の被災3県にある病院の多くは、東日本大震災に伴う津波で、壊滅的な被害をもたらされた。全壊または一部損壊したのは、全体(20床以上)の8割に当たる、約300拠点。「被災地で機能を果たした石巻赤十字病院は、5年前に移転していなかったら壊滅だった。老朽化した病院を免震構造に改修しても、水没したら元も子もないことは、この震災の教訓だ」(防災専門家)。
国の中央防災会議は、東海・東南海・南海に及ぶ「三連動地震」の震源域を、静岡県沖から高知県の足摺岬沖、さらに九州の日向灘沖まで、約750キロメートルに延長した。大震災並みのマグニチュード9クラスの揺れによって、過去最大級の津波が起きると想定。全国に約600ある災害拠点病院や救命救急センターが、津波のような大災害にどれだけ余裕を持って対処できるか、定かでない。
厚生労働省によれば、災害拠点病院と救命救急センターの耐震化率は、2009年度上半期で62・4%(図)。10年度に71・5%まで向上させる目標を掲げ、達成したもようだが、いまだ100%には及ばないうえに、津波は対象外。厚労省医政局は、「三連動地震で個々の病院を検証するところまで手が回らない。中央防災会議の基本計画見直しを待って、津波などへの措置が取られるかどうか見る」と述べ、中央政府による対応の鈍さが懸念される。
ここ数年、災害拠点病院や救命救急センターは、厚労省や総務省による潤沢な補助金の恩恵を受け、耐震改築や新築が進んだ。が、「カネを使い切れていないのが実情」(医業コンサルタント)との声も一方ではあり、11年度補正予算に追加の措置は盛り込まれなかった。