33年ぶり5%超でも「賃上げ一色」はまだ遠い 春闘で注目が高まる日銀マイナス金利解除の行方
3月14日、流通や外食、繊維などの労働組合を束ねるUAゼンセンが5.91%(加重平均)という高い数字を示した。流通業ではイオングループ各社が、先駆けて2月下旬に満額回答を得ており、今年は地方のスーパーが追随した。「人材確保のために、ついて行かなければならないという思いが働いたのではないか」とUAゼンセンの松浦昭彦会長は会見で語った。
そして迎えた3月15日の連合の全体集計。5.28%という数字は、1991年の5.66%を記録して以来の高さだった。「ステージ転換にふさわしいスタートを切れた」と連合の芳野友子会長。
中小企業の賃上げ状況が見えるのは4月
ただし、高い第1回集計をもって「賃上げが浸透した」とは言うにはまだ早い。
ポイントは2つある。1つは、「誰が賃上げの恩恵を受けるのか」。
会社側は初任給引き上げと、2年目以降の若手と逆転を避けるための引き上げに傾斜している。若年層人口の減少が著しい中、人材確保への危機感は強い。組合側の要求を超える回答が相次ぐ背景にも、労働組合側が要求する一律引き上げに応えたうえで、それに加えて若年層引き上げを実施する実情があるようだ。
「初任給引き上げ競争は過熱気味だ」と連合会長代行の松浦UAゼンセン会長は懸念を示した。
もう1つは、現時点での賃上げ率が大企業中心の数字であることだ。
回答集計の中心となる平均賃金方式の数字は、組合員数で加重平均するため、組合員数が多く交渉で先行する大企業の数字が全体を引き上げる。第1回集計対象の144万人のうち、組合員数1000人以上の大企業の組合員が9割。最終結果では7割まで下がる。
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