「事実無根の噂を平気で流す人」が許容される理由 他人の不祥事が面白おかしく語られることに快感

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話を聞いて、この女性は頭にカーッと血が上った。すぐにお局社員に電話して「なぜ嘘八百を言いふらすんですか」と問い詰めてやろうかと思ったほどだ。だが、そんなことをすれば、さらに何を言いふらされるか、わかったものではないと思い、ぐっと堪えたそうだ。その晩から、怒りと悔しさが込み上げてイライラし、さらに根も葉もない噂をばらまかれるのではないかという不安から眠れなくなって、私の外来を受診した。

お局社員は40代の独身で、とくに若い女性社員に対して厳しく、気に入らない社員がミスを犯すと、厳しく叱責する。しかも、それを後々まで蒸し返し、「あのミスのせいで、みんな大変だったのよ。二度とあんなことがないようにしていただきたいわ」「できない人が1人いると、大迷惑だわ。もっとスキルを磨いていただかないと」などと責める。

とりわけきつく当たられているのが、既婚あるいは男性と交際中の女性らしい。そういう女性からの経費請求には、必ずといっていいほど難癖をつけるため、自腹を切って必要な備品を購入している女性社員もいるほどだとか。そのうえ、「腰掛け気分で会社に来てもらったら困るのよね」などと嫌みを言う。

事実無根の噂を流された女性も、経費請求の際に不快な思いをしたことが再三あった。また、彼女が同期の男性と交際していたことは、社内では割と知られていたらしい。同期との交際に対して、お局社員が羨望を抱いた可能性も十分考えられる。羨望とは、他人の幸福が我慢できない怒りにほかならないので、この幸福をぶち壊してやりたいと思って、とんでもない噂を流したのかもしれない。

「イネイブラー(enabler)」が多い組織の怖さ

私が驚くのは、お局社員が流した噂を社内の多くの人々が信じただけでなく、さらに拡散したことだ。その結果、噂を流された女性の交際相手までがうのみにして、別れを告げた。お局社員の日頃の行状を聞く限り、こんな人の言うことをなぜ信じるのかと首を傾げたくなるが、それなりの理由があるようだ。

まず、お局社員は男性社員には非常に優しいという。若い女性社員に対する容赦ない対応が嘘のように、男性社員、とくに営業職の男性からの経費請求には甘く、とても親切で、面倒見もいい。だから、お局社員を姉のように慕っている男性もいて、噂を流された女性の元交際相手もその1人だった。

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