事故に即応「突発的臨時列車」はなぜ運転できたか 新幹線停電や羽田事故、その時鉄道各社は?

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一方、1月2日の羽田空港事故への対応では、JR各社が普通車全席自由席(グリーン車などは車内で購入)の臨時列車を出した。JR東日本・北海道は、新函館北斗―東京間で臨時「はやて」を運行し、JR北海道はその「はやて」に接続する特急を走らせた。またJR東日本・西日本は、北陸新幹線で臨時「はくたか」を金沢―東京間で運行した。

また、東海道新幹線では臨時「のぞみ」を東京―新大阪間で、また山陽新幹線では臨時「ひかり」を博多―新大阪間で運行した。とくに目立ったのは東海道新幹線である。1月2日から5日までは普通車全席自由席の「のぞみ」を運行し、6日と7日の「のぞみ」には指定席も設定された。

羽田事故当日、終電後の臨時「のぞみ」

列車のダイヤ、車両の運用、乗務員の手配などは事前に決まっており、そう簡単に臨時列車は出せないが、東海道新幹線は1時間当たり最大12本の「のぞみ」を運行できるようになっており、このパターンの中で臨時列車を走らせることはできる。だが、羽田空港の事故発生当日は、通常の終電後に臨時列車を走らせた。これはあらかじめ設定されていたであろう「のぞみ12本ダイヤ」のパターンに入っていない。

東海道新幹線 N700SとN700A
羽田空港事故の際、東海道新幹線は通常の終電後に臨時の「のぞみ」を運行した(撮影:尾形文繁)

JR東海によると、この終電後の臨時ダイヤは意識してつくられたものだという。「航空機による旅程を変更されたお客様の受け皿となれるように、羽田空港や伊丹空港からの移動時間も勘案した上で運転時刻を設定した」ということだ。車両や人員の手配については、「ケースバイケースであり手配が難しい場合もあります」というものの、担当する乗務員、使用可能な車両、車両整備に必要な体制の確保を各関係箇所と調整して対応しているという。つまり、突発的な事態でもやりくりできる体制をつくっているといえる。

新幹線にせよ在来線にせよ、各社はできる範囲でそのつど、前例も意識しつつ早急な対応をしてきた。そのような積み重ねが、臨機応変に臨時列車を運転できる体制につながっているのだ。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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