事故に即応「突発的臨時列車」はなぜ運転できたか 新幹線停電や羽田事故、その時鉄道各社は?

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まずは1月23日の例から見てみよう。架線の破損はこの日の10時ごろに発生し、東京―高崎間と東京―仙台間は終日不通となった。新幹線が不通になると、問題となるのは代替ルートだ。東京―高崎間なら、時間はかかるが高崎線が利用できる。北陸方面なら、目的地によるが東海道新幹線で米原まで行き、在来線に乗り換えるという方法もある。

だが東北方面はそうはいかない。東北本線には現在、在来線特急は走っていない。常磐線も品川・東京・上野―仙台間を走る特急は3往復しかない。

そこで、移動手段を確保するために、在来線に臨時列車が運行された。

東京―仙台間に在来線の臨時快速

東北本線では、臨時の快速列車が東京―仙台間で運行された。種別は快速ではあるものの、停車駅は新幹線の停まる駅のみとされた。同線は電化方式が上野(東京)―黒磯間は直流、その先は交流に分かれている。日常的には東京―仙台間直通はもとより、黒磯駅をまたいで走る旅客列車は現在設定されていない。そこに、どうやって急きょ臨時列車を走らせることができたのか。

JR東日本に聞くと、この臨時列車は東京―黒磯間を管理する東京総合指令室と、黒磯―仙台間を管理する仙台総合指令室の両者で車両や乗務員、列車時刻を調整した上で設定したとのことだ。車両は特急型のE653系電車を使用した。直流電化区間と交流電化区間の両方を走行できる交直流電車なので直通運転が可能だ。

E653系 2022年 新幹線救済臨時快速
2022年の福島県沖地震で東北新幹線が不通になった際、東北本線で運転された臨時快速。東北新幹線停電時の臨時列車と同じ国鉄色のE653系も使われた(写真:Jun Kaida/PIXTA)

車両はつねにスタンバイしているわけではなく、使用できる車両を確認し手配したという。今回の場合は、交直流電車という汎用性の高い車両が空いていたから設定できたといえる。控えの乗務員もつねにいるわけではない。乗務員も、誰もがどの路線でも運転できるわけではない。臨時列車の運転を検討する線区に対して、その区間に乗務できる社員を手配しているとのことだ。

この臨時列車は東京駅15時33分発だった。JR東日本の発表によると、新幹線の架線破損が起きたのは9時58分。約5時間で、通常は直通が走らない区間の列車を準備したことになる。

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