こうした現状を踏まえて、日本での自動運転に関するこれまでの流れを振り返ってみると、2014年度から9年半にわたって、産学官連携の戦略的イノベーション創造プログラム(通称SIP)のひとつとして、自動運転に関する議論が一気に進んだ。
同プログラムの統括者は「2014年時点での日本は、自動運転においてアメリカなどの周回遅れだった」とSIP開始当時を振り返る。それが今では、世界と肩を並べる技術や法整備のレベルになってきたのだ。
議論が足りない「社会との共存」
そうした議論の中で、「社会受容性」という言葉がよく使われてきた。これは「地域住民は自動運転をどう捉えるのか?」、または「そもそも、自動運転はこの地域に必要なのか?」といった、出口戦略を指す。
だが、言葉としての社会受容性が独り歩きし、実質的な「社会との共存」に対する議論が甘いと感じる実証実験も少なくなかった。
自動運転に対する地域住民の関わり方が弱い、あるいは将来構想に対して自治体と地域住民とで行われるべき議論の持続性が乏しいケースもある。そもそも、自治体の「将来の街づくり」に対する本気度が低いことすらある。
その結果、どうしても自動運転技術の研究開発と法整備が優先し、本来の目的である「社会との共存」の議論が「後付け」になってしまうケースが少なくなかった。筆者はこれまで、全国各地で自動運転の実証試験の現場を定常的に見てきて、そう感じる。
それが、SIPでの議論を経て、2024年問題をはじめとする厳しい現実に直面するようになり、次の時代に向けて「自ら社会を変えていかなければならない」と気づき始めた基礎自治体(区市町村)
直近で印象に残った地域としては、2023年11月25日から2028年3月31日までの5年間、市内の中心地で自動運転「GIFU HEART BUS」の運用が始まった、岐阜県岐阜市がある。
岐阜市は、地域公共交通計画(2021~2025年)に基いた自動運転実証実験を開始。今回の社会実装では、一般交通との混走が多い技術的に難しい交通状況で、最新ソフトウェアを搭載しての運行に臨んだ。
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