3日に1日夫が殺人で検挙、「配偶者間DV」の実態 支援歴20年のベテランが怒りの告発
公的シェルターの最大の問題は、2週間をメドとする一時保護の後、暴力を振るっていた夫の元に帰さない、ということが徹底されていないことです。公的シェルター利用者の6割近くが帰郷、実家、夫の元に戻っています。こんな危険なことがあるでしょうか。
民間シェルターでは、元の地域はもちろん、実家も危険ですから戻ることは勧めません。一度逃げれば暴力はエスカレートするに決まっていますから、危険度は高くなるのです。このような具合で、日本はDVと性暴力被害者支援において、国際的にも最後進国となっています。
――婦人相談所は、なぜ有効に機能しないのでしょうか。
婦人相談所はもともと売春防止法で検挙・保護された女性たちの更生を目的につくられた施設です。困難を抱えた女性たちの最後の支援組織として機能が拡充されてきたものの、「保護してやる」という意識が払拭されていません。一方で、民間シェルターは被害者である女性に寄り添うのが基本。そもそもの支援の考え方が違うのです。
売春防止法で摘発される女性が減っている一方、若年女性の性被害は増えています。
婦人相談所は、従来の「措置・保護・収容・指導・更生」から「当事者主体で女性の権利回復を目指す」方向へと質的な転換を図らなくてはいけません。
シェルターネットでは、婦人相談所のガイドライン策定に提言してきました。そこには先に述べたような支援理念の転換を盛り込んでいます。ガイドラインは全国の婦人相談所に周知されましたが、このガイドラインに抵抗を示す自治体・相談所もあり、暴力という人権侵害を受けたすべての女性たちが回復支援を求める場所として、婦人相談所やDVセンターが生まれ変わるには、もう少し時間がかかるかもしれません。
DVへの対応は、地域間格差が大きい
――DV対策に関しては、日本全体がダメということでしょうか。
詳しくは申し上げられませんが、地域間格差が大きいと感じます。たとえばある自治体(都道府県レベル)は、DV被害者が駆け込んで来たら、なるべくよその自治体に逃がすという方針を持っています。表向きは被害者の安全のためですが、実際は責任逃れといわれても仕方がありません。
そうかと思うと「必要な人は全部受け入れる」という方針を持ち、そのように運営している県もあります。ここには県のDVセンター所長のポリシーが反映されます。
警察の姿勢も地域によってというより、個人差が大きいです。ある地方の警察では、性被害を訴えた女性に対して、女性の警察官が「おカネ目当てで言っているのか」と、とんでもないことを言いました。私たち支援者が警察に抗議をして、その女性警察官を担当から外してもらいましたけれども……。
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