3日に1日夫が殺人で検挙、「配偶者間DV」の実態 支援歴20年のベテランが怒りの告発

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――驚きました。女性だから適切に対応してくれる、というわけではないのですね。

本当に個人差が大きいのです。たとえば北海道のある市の警察にはとても理解のある男性の担当者がいます。彼は、DVや性暴力被害者が警察に駆け込んできたら、民間シェルターにつないでくれます。

対応は人によっても差がある

そして、「俺がいないときでも同じように対処するように」と部下にもしっかり伝えてくれていますし、民間シェルターのスタッフから警察に連絡があったら「俺の命令だと思って、この人たちの言うことを聞け」と言ってくれている。このように警察としっかり連携ができると、被害の回復もしやすいのです。

北海道には、ほかにもいい例があります。ある企業で、職場結婚した夫とDVが原因で離婚した、という事例です。妻は「元夫と同じ職場に居づらいのでは?」と思われたそうですが「あちら(元夫)を転勤させてくれ」と頼んだら、その要望が通ったそうです。このように企業との連携も非常に大事です。

どんな暴力被害でも、被害者が仕事を辞めずに済むような仕組みが大事なのです。経済的に安定していることは、とても大切なことですから。

――対応策があるとわかると、少し希望が持てます。

根本的に間違っているのは、強盗でも殺人でも加害者がつかまるのに、DVの場合だけ、被害者が逃げなくてはいけない、ということです。暴力のありようは社会のありようが決めています。今の社会のあり方を変えなくてはいけないと思います。

※後編に続く

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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