「香港政府は住宅市況の動向に一貫して注意を払っている。『辣招』の全廃は、目下の全体的な状況を慎重に考慮したうえでのことだ」。陳長官は、今回の決定の背景についてそう述べた。
陳長官の言う「全体的な状況」とは、香港の不動産市況の長引く低迷にほかならない。香港政府が2月27日に発表した1月の個人向け中古住宅の販売価格指数は9カ月連続で下落。過去最高をつけた2021年9月から2割以上落ち込んでいる。
香港政府は、以前は財政収入の約2割を公有地の払い下げによる収入から得ていた。しかし市況の悪化と金利の高止まりにより、2023年に競売にかけた土地の多くは(予想価格を大きく下回る)安値での売却を迫られた。その結果、香港政府の2023年4月から12月までの土地売却収入は123億香港ドル(約2364億円)と、計画のわずか14.5%にとどまっている。
効果は短命との見方も
不動産投資家の立場では、特別印紙税の全廃は間違いなく朗報だ。とはいえ市場関係者の間には、その作用は香港政府が期待するほど大きくないと見る向きもある。
例えば、投資銀行大手のUBSは調査レポートのなかで、「特別印紙税の全廃は中国本土の投資家の関心を引く可能性があるものの、効果は長続きしないだろう」と指摘した。
その理由の1つは、現在の賃料水準から得られる物件利回りが住宅ローン金利よりも低い「逆ザヤ」状態にあることだ。さらに住宅の新規供給量などを加味すると、香港の住宅に対する投資需要は「今後も低迷が続く」と、UBSは予想している。
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は2月28日
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