台湾問題「現状維持」が大多数、その自然な理由 次の脅威は日本?見え隠れするアメリカの思惑
もし台湾人の多数が独立派で、統一を企図する中国を敵視し中国対台湾の対決になっているのであれば、アメリカが独立派を支持することは、違法であっても「人道的介入」と言うことはできよう。
だが台湾が抱える対立は「本省人」対「外省人」だ。若者同士では溝は埋まりつつあるようだが、「外省人」の軍人の中にはなお「台独」への敵対意識が残り、保守派の国民党支持の将校も少なくないようだ。
だが、今日の国民党は親中派だ。「米中戦争が起きれば」のシナリオを描いてみようとしても、肝心の台湾軍の動向が複雑で予知しにくい。概して言えば左派は「台湾民族主義」の理念派で親米的、右派は経済重視の現実派で親中的だから、日本の通念と合致しないように思われる。
中国本土から最初の定期便が着いた時、空港に押し掛けた右派団体は赤旗(五星紅旗)を振って歓迎したのだ。アメリカの対中強硬派が台湾独立を支持するのは台湾の利益と安全のためではなく、急速に発展する中国の足を引っ張りたいからだろう。
中国と台湾は、韓国と北朝鮮のように敵対関係ではなく、この上ないほどの密接な相互依存関係にある。中国と台湾の仲を裂くことでアメリカは中国に大打撃を与えることができる。
だがそれは台湾にとっても致命的な損害になり、日本やアメリカにとっても有害無益などとは考えが及ばないのだろう。
「次の脅威は日本」の論
日本は、1968年に名目GDPが世界第2位になった後も成長を続け、三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを購入した1989年には、日本の名目GDPは3兆1170億7000万ドルでアメリカ(5兆6416億ドル)の55%に達した。
1人当たりの名目GDPは約2万5336ドルに対し、アメリカは約2万2800ドルで追い抜かれていた。
アメリカの対日貿易赤字が増大し、日本製の自動車、電気製品、鉄鋼、繊維などの輸入に脅かされる経営者、失業に直面する労働者たちは「やがてアメリカ全体が日本人に買い取られる」との「黄禍論」に興奮し、日本製の自動車や電気製品を叩き壊したり、日章旗を焼く集会が各地で起きた。
アメリカの国会議員の中にも人気取りか、それに参加する者もいた。アメリカではドイツ製の車も多く輸入されていたが、日本車だけが排斥の的になったのは、アジア人がのさばることに対する人種的感情があったと考えられる。
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