第4回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション--受賞企業担当者に聞く経営戦略としてのダイバーシティ
○須田
今日は「経営戦略としてのダイバーシティ」、副題として「自社独自の経営戦略に連動したダイバーシティストーリーを設定しよう」というテーマでお話しさせていただきます。
企業の中には、「とりあえずダイバーシティをやらなければ」とか「社長が言うから仕方がない」との理由でダイバーシティを行っているところもあると思います。社長の中にも、「業界各社が行っているから、ダイバーシティを始めよう」という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、本当にダイバーシティを定着させるためには、それを進めることが企業の競争力に寄与しなければなりません。企業のトップである社長から一般社員まで全員がダイバーシティを行って得をしたというように思わないと、本気になって取り組むということにはなりません。
人間は自分が得となることを一生懸命行いますが、これは組織も同じです。この「得」とは最終的には売り上げや利益かもしれませんし、「最近、わが社は意見を言いやすくなった」「新しいアイデアが出るようになってきた」ことかもしれません。あるいは「ものが言いやすくなって会社へ行くのが楽しくなった」「創造的なアイデアが生まれやすくなって、新しい商品・コンセプトが登場し始めてきた」ことかもしれません。ダイバーシティに限らず、どのような施策でも何か結果が出て得をすれば、これを推進しようとします。しかし、結果が出なければ定着させることは難しいですし、単なる流行として終わってしまうことになります。
ダイバーシティを流行として終わらせないためには、ダイバーシティを経営戦略と結びつけて、独自のストーリーをつくることが大切です。どこの企業であれ、特定の課題や問題を抱えて、それらに対応するための経営戦略を持っています。経営戦略は「どのような事業領域で、どこで、誰が、誰に対して」という設計図を描き実践していくわけですが、さらに経営戦略は「全社戦略」または「企業戦略」と言われる部分、「事業戦略」あるいは「競争戦略」と言われる部分、それから「経営機能別戦略」に分かれます。ダイバーシティ担当者は、こうした分野にそれぞれ具体的に連動した形でストーリーを設定してください。この経営戦略とダイバーシティを連動することで、ダイバーシティを進めることが経営戦略の実現につながる、そして組織も自分も得をする、そうなればダイバーシティの実施に対して「腑に落ちる」ということになり、全員が頑張ってダイバーシティに取り組むことにつながると思います。