「不適切〜」中盤での急転直下でこれから起こる事 震災描いてきた宮藤官九郎が対峙しているのは
コメディ作家という印象の強かった宮藤官九郎が『あまちゃん』以降、社会派なものも描けるという認識が広がって、その後、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年)でオリンピックを題材に昭和史に挑んだ。これには賛否両論があったがそれはさておく。『いだてん』では関東大震災が描かれ、『あまちゃん』『いだてん』『不適切〜』は宮藤官九郎の震災3部作と呼ぶ声もSNSであった。
宮藤がディズニープラスで企画、脚本、監督した『季節のない街』(2023年、原作:山本周五郎)は震災とは明言せず、「ナニ」と呼ばれるある出来事によって12年もの間、仮設住宅で暮らすことを余儀なくされた人たちの物語で、これはかなり社会派感の強い作品である(でも登場人物のおもしろさにフォーカスされている)。
また、宮藤は『木更津キャッツアイ』シリーズ(2002年)や『俺の家の話』(2021年)などで“死”というものを何度も描いている。死をどういうふうに捉えるか、従来の手つきとは違う角度で描こうとトライしてきた作家である。
関東大震災も阪神・淡路も、それ以外にも熊本地震や直近では能登半島地震もあって、どこかで誰かが災害の被害に遭っている。そこで失ったものははかりしれない。私たちはそれぞれの喪失に思いを致さなくてはならない。そういう意味では、次第に遠い記憶になりかかっている阪神・淡路大震災について、30年の節目に改めて振り返ることも大切なことだろう。
自分の「運命」を知った小川はこれから?
もはや視聴者の興味は、1995年に起こることを知ってしまった小川がこれからどうするだろうかということだ。未来を事前に知ることができれば、悲しい出来事を回避することができるのではないか。でもそうしたら、いろんなことが変わってしまう。それが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)をはじめとしたSFでおなじみのタイムパラドックスだ。
自分たちだけ助かればいいというわけではないし、それでも大事な人を救うことは不適切ではないはずーーなどとドラマを見ながら妄想はどんどん膨らむわけだが、宮藤官九郎はきっと斜め上の展開を用意しているに違いない。
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