「不適切〜」中盤での急転直下でこれから起こる事 震災描いてきた宮藤官九郎が対峙しているのは

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2011年に起きた東日本大震災の2年後に放送された『あまちゃん』は、宮藤が宮城県出身ということもあり、震災から2年が経過した東北を応援するという意味合いももっていた。基本、笑いの成分の多い内容だったが、終盤、主人公アキ(能年玲奈 現:のん)の親友・ユイ(橋本愛)が憧れの東京にいよいよ向かった日、列車のなかで地震が起きる。東京で彼女を待っていたアキはつながらないケータイに不安を募らせて……。

海女とアイドルを目指すアキと彼女を取り巻くおもしろおかしな人々の楽しいドラマと思って毎朝見ていたら、現実を突きつけられて、息もできないような気持ちになったものだ。そして『不適切〜』でもまた――。

「空白」の38年間に何が

ドラマで描かれた阪神・淡路大震災の日を少し長くなるが、振り返ってみる。第4話の終わりに出てきた犬島ゆずる(古田新太)が、小川市郎(阿部サダヲ)のことを「お父さん」と呼ぶ。彼は小川の愛娘・純子(河合優実)の夫で、渚の父だった。つまり、渚は小川の孫であったのだ。ややこしい。

タイムスリップものなので、1986年から来た小川のほうが若々しくて、2024年のゆずるのほうが老けている。1986年から2024年にタイムスリップしている小川は、1987年から2023年までが空白である。

ゆずるとの話で、純子は女子大生になったとき、ディスコで黒服のゆずる(若い時代は錦戸亮)と出会い、結婚を考えるようになったこと、小川はそれを認めなかったこと、でもやがて心を開いた瞬間があったことを、小川は知る。それが1995年1月17日の早朝であった。

例えるなら『シックス・センス』(1999年)的驚き。それまで、ドラマの中で叫ばれてきた不適切な問題なんて吹っ飛ぶような展開に、鬼の首をとったようにドラマの不適切な問題点を指摘していた者は、己の首をすくめたのではないだろうか。

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