そして、研究者は学生だけではなくその両親にまでインタビューした。子どもたちはどのくらい練習したのか。何歳くらいで曲とわかるようなものを演奏したのかなど調査した。研究者にとって幸運だったのは、イギリスの教育制度がこれら5つの能力別グループ分けを超えた独自の演奏能力に関する評価方法を提供してくれたことだった。
イギリス全土で行われている若い演奏者の評価方法は、厳密に統一されている。具体的にいうと、楽器を学ぶ生徒のほとんどが国に評価される昇級試験を受けるからだ。評価者は、それぞれの生徒の能力を9つの等級の一つに当てはめることになっている。
生まれつきの才能の証はなかった
研究者は257人の被験者間で音楽の能力や業績に大きな違いがあることを説明するため、調査結果を2つの方法で検証した。
調査結果ははっきりしていた。最高レベルの演奏をする者に音楽での早熟の兆し──我々の誰もが存在すると考えている生まれつきの才能の証──はまったくなかった。それとは逆に、幼少期からみられた特別な才能の兆しという点においては、どのグループの調査結果も大変似通っていた。
トップグループである音楽学校の生徒においては人生の早い時期に曲を繰り返して演奏できたという点で、他の者に比べ高い能力を示していた。具体的にいうと、曲を繰り返すのに他のグループは、平均して24カ月かかっていたのを、平均18カ月でできるようになっていた。
しかし、それだけで特別な才能がある証拠だとはいえない。なぜなら被験者とのインタビューを通じ、次のことがわかったからだ。トップグループの被験者の両親は、他グループの両親に比べ、子どもに歌いかけることに熱心だった。しかし、他のいくつかの観点でみても、他にグループ間の重要な違いを示すことはできなかった。被験者はたいがいみな8歳で自分の楽器を学びはじめていた。
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