日立 "激務だけれどホワイト"な働き方のリアル 「課長が何人も辞めた」「低姿勢すぎる上司」

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Aさん 自分の担当する案件がルマーダかどうかは、システム上で自らチェックをつける運用になっている。ただ、「ルマーダ案件化」すると管理が大変になってしまうので、私はこれまでチェックをつけたことがない。

──仕事に人を割り当てるジョブ型人事・雇用は現場になじんでいるのでしょうか。

Aさん まだ過渡期だ。課長以上はジョブと処遇が結び付いているはずだが、非管理職は職種や階層ごとに求められる仕事内容などを定義した職務記述書が作られたくらい。ジョブ別にやるべきことが明確になるので、例えばある課長が別部署に異動しても、すぐにバリバリ活躍できる環境になったとは感じる。

Dさん 私が1990年代前半に日立に入社したときは就職というより就社。日本企業に典型的な年功序列制で「揺りかごから墓場まで日立」という雰囲気だった。だから今の環境変化には驚く。中途採用も大量に行っている。

管理職目線では、ジョブが明確になったことでチームづくりや人材育成がやりやすくなった。これまでは自分の感覚や経験頼みだったが、「このジョブの社員なら、この程度のスキルがあるはずだ」という裏付けができた。ジョブと実際の能力とにギャップがあれば牽制できるし。

課長は異次元の仕事量

──Dさん以外は非管理職ですが、出世したいですか。

Aさん 私はノー。今は主任なので次は課長となるが、管理職の中でも課長級がとくに大変で、部署では何人も連続で辞めていった。

プロジェクト管理や予算管理をしながら部下の管理もするから、とにかく忙しい。今は若手の流動性が高いから、若手が1人抜けたらその分の仕事も、まずは課長が補う。同じ激務ならば、もっと年収が高いところのほうがいい、と外資系や大手のITコンサル会社に転職していく人が多い。

今の部に所属してからこれまで30〜40人の課長がいたが、女性は2人だけだった。しかも既婚女性はいても、子どもを持つ人はいない。差別ではなく、激務だから。育児と仕事を両立させる制度は非常に充実しているので、子持ちでも働きやすい部署に異動し、仕事を続ける道はあるはず。

Cさん 課長がいちばん忙しそうなのはグループ会社でも一緒。昇進について現実的に考えたことはまだないが、ソリューションの提案ができて、コミュ力の高い人が出世していく。

(構成:印南志帆)

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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