一方、在任期間6年で退任する伊東社長について、「ホンダの”体質”を変えたように思う。量を追うようになった。トヨタを追っても仕方がないのに」という株主の声も聞かれた。この「量」に対する指摘は、ある意味で的を射たものといえる。伊東社長は、自身が2012年に発表した中期経営計画で、2016年度に当時の1.5倍である600万台以上を全世界で販売するとしていたからだ。
だが、リコール続発が問題視される中で開かれた昨年11月の新車発表会で、伊東社長は、「順調ならそれぐらいの台数はいけると算段して考えた。数字が独り歩きしていた」と述べ、「まず大事なのは、各地域で、商品やサービスを通じて顧客に喜んでもらうことをファーストプライオリティー(最優先課題)として、再度、肝に銘じて活動をしていく」と説明。さらに今年2月には、「600(万台)というものを、ある意味取り下げている」と、数字目標を事実上棚上げする発言をしている。
悩ましきエアバッグ問題
新型車での品質問題は収束したとの見方が一般的だが、エアバッグ問題は長期化の様相を見せている。自動車メーカーの中でタカタ製を最も多く搭載するホンダは、運転席、助手席あわせてのべ約1,960万台にまでリコールが拡大。タカタ製エアバッグの欠陥に絡む事故の死亡者は7人に上り、その全てがホンダ車で発生している。伊東社長はタカタ問題について、「顧客の安全、安心を最優先に考え、リコールをすみやかに進める。一刻も早い原因究明に向けて努力する」と総会の場で述べた。
日系自動車メーカーで初めてエアバッグを搭載したホンダが、1980年代にエアバッグの量産への協力を求めたのがタカタだ。同社の株式を1.2%保有しており、関わりが深い。
そのタカタは、リコールの拡大で2014年度は295億円の最終赤字に転落。今後も巨額のリコール費用がのしかかるリスクがつきまとっている。こうした状況を不安視してか、株主からはホンダがタカタの株式を保有する目的を問う声もあったという。
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