ホンダ、非公開の株主総会から漏れた「声」 2014年度は品質問題の対応に追われた

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しかし、会社側は「中長期的な視点で事業運営に関係する取引先について、取引の性質および規模などから株式保有の必要性を判断している」と回答し、タカタに対する具体的な言及は避けた。ただ、伊東社長は今年2月、「顧客への対応が滞るようでは困る。必要な支援はしていく」とも話している。エアバッグ問題は自動車業界全体に影響するが、取引量が最も多いホンダの悩みは深まる一方だろう。

品質問題のほかに、株主からは「(同業)他社と比べて、ホンダの株価が低いのでは」という質問も出た。2014年度の1年間の株価上昇率を比較すると、トヨタと富士重工は4割強、日産は3割強と好調だが、ホンダは7.4%とかなり低い。これに対し、伊東社長は「品質問題で(販売が振るわず)国内生産の一部に空きが生じた。最近の株価は残念な結果だ。品質向上を最優先課題で取り組む」と強調した。

「ホンダイズム」とは何なのか

今年2月に社長交代会見を行った八郷氏(左)と伊東社長(右)

総会では、伊東社長からバトンを引き継ぐ八郷隆弘氏が挨拶に立ち、「足元を固め、事業基盤の再強化を行いながら、ホンダらしい挑戦的な商品・技術を磨いていきたい」と抱負を語った。

話を聞いた複数の株主からは、「新しいことに挑戦するホンダイズムを追求してほしい」「原点に戻ってもらいたい」「ちょっと違った角度から製品を作ってほしい」「ホンダにしかできないものを造ってもらわないと困る」など、それぞれ言い方は違うが、ホンダブランドに求めるところは”共通項”があるように思われた。

「調整肌」「聞き上手」と評されることが多い八郷社長が、社内外の声に耳を傾けながら、経営の舵取りをどう行っていくのか。売上高10兆円を超すグローバル企業に成長した今、ホンダイズム追求のあり方は、きわめて難しい課題なのかもしれない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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