EU版iPhoneの「退化」を日本も無視できない理由 DMA対応でアプリストアなど開放、リスクは増大

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ユーザー目線に配慮した工夫もいくつかある。アプリの出自やどのような機能を使っているのかなどの詳細について、App Storeとは異なるストアでも共通の表示となるよう「シート(情報の一覧)」を用意し、ユーザーがそのアプリをインストールすべきかどうかの判断を下しやすくしたという。

アプリストアからインストールするアプリがアクセスできるデータ・センサーについて、ユーザーがストアごとに許可・不許可の設定も行えるようにしている。

これらは最低限の品質を確保し、ユーザー自身によるアプリの安全性判断を助けるものではあるが、これまで悪意あるソフトウェアをシャットダウンしてきたApp Storeと同じ品質を保証するものではない。

もちろん、代替アプリストアがAppStoreと同等の品質管理を行えれば、必ずしも“穴(セキュリティホール)”とはならない。また、ストア選びはユーザー自身の選択でもある。

しかし自由にはリスクが伴う。これを前進と呼ぶ人もいるだろうが、安全性の面では後退であり、パソコン世代への回帰だ。

増大するユーザー側の責任

代替ブラウザエンジンの許可に関しても、そこで得られる自由にはリスク増加の危険を伴う。その責任はユーザー自身が負うものだ。

前述したWebXRへの対応について、アップルがiPhone向けに提供するAR Kitという機能を使わせるがために、WebKitのWebXR対応がおざなりになっているのではないか、それこそが市場独占の弊害である、という言説は当然あるだろう。

一方でブラウザエンジンには、JITコンパイラ(ウェブアプリを効率的に動作させる仕組み)、ウェブサンドボックス(ウェブアプリが他アプリに干渉できないよう隔離する技術)、パスキー(認証技術)が含まれている。これらはセキュリティ上、重要な役割を担い、セキュリティホールとなりやすい要素も含んでいる。

つまり代替ブラウザエンジンを選択する場合、ウェブを通じての攻撃への対処は、アップルの手を離れることになる。

iOS 17.4以降の変更点は多岐にわたるため、とても本記事だけで網羅はできないが、可能な限りの安全対策は施されているものの、セキュリティとプライバシーに関する品質をどこまで維持できるかは、代替アプリストアやブラウザエンジンの提供者、それにユーザー自身の選択にかかっているのだ。

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