EU版iPhoneの「退化」を日本も無視できない理由 DMA対応でアプリストアなど開放、リスクは増大

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では、日本でも規制対象となる可能性が高い、代替決済手段の提供についてはどうだろうか。

EU版iPhone向けのアプリ開発者は、従来通りのアプリ配信と決済に加えて、App Storeでアプリを流通させつつ、アプリ内課金に代替決済プロバイダーを利用する方法と、代替アプリストアを利用する方法の3つからアプリの流通経路を選べるようになる。

これに伴い、これまでシンプルだったApp Storeの手数料は、基本手数料、Core Technology Fee(CTF)、決済手数料の3つに分けて計上される。

App Storeの手数料が30%だと広く知られているが、これは基本料であり、売り上げの小さな開発者や登録初年度の開発者は15%の割引手数料が適用される。ヨーロッパ市場における直近の実績では、30%の手数料を支払っているアプリは全体の3%だ(アプリ数の比率であり、決済金額ベースではない点に注意)。

EU版App Storeでは、この基本手数料が17%と10%に引き下げられ、App Store以外のアプリストアを利用する場合は徴収されないこととなる。

分離された決済手数料は3%。この数字も決済サービスとして十分にリーズナブルと言えるだろう。こちらも代替決済手段を用いる場合、アップルが徴収することはない。

CTFを支払う開発者は全体の1%

つまり、代替アプリストアと代替決済サービスを利用する場合に、アップルが徴収するのはCTFだけということになる。

CTFは、従来一括だった手数料からシステムの利用料を分離したものだ。ただしCTFの支払いが必要になる開発者は、全体のわずか1%にすぎない。99%のアプリ開発者にとっての手数料は、以前の料金体系と同等、あるいは安くなる。CTFは、1つのアプリを大量に配布する、ごく一部の大手開発者のみが支払う仕組みだからだ。

100万以上のダウンロードがあるアプリは、100万を超えたダウンロード数に対して年に1度、0.5ユーロの手数料がかかる。なお、その年次を通して何度バージョンアップを行っても、ユーザーが再ダウンロードを繰り返しても追加料金は発生しない。1ユーザーが異なるデバイスで複数のダウンロードを行っても同じだ。

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