書籍も多数「繊細さん」ブームに潜んでいる弊害 HSPの概念だけでは説明できない「生きづらさ」

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「トラウマ」という言葉自体はおそらくほとんどの方がご存じかと思いますが、その内容を詳しく知る人は少なく、自分とは関係のないもの、PTSDのように特別な事件や事故を経験した人が被るもの、と感じるかもしれません。

しかし、実はトラウマはとても身近なものです。先ほど夫婦喧嘩が重大なダメージを与えると例示したように、日常にあって、これまでの常識であれば「そんなことくらい大したことない」「どこにでもある」「大げさな」と思われるようなストレスによってトラウマは生じます。

特に、人間も含めて動物は些細なものでも長期にわたるストレスにはとても脆弱なのです。

本人がトラウマの自覚症状がないときも

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トラウマとは、日常の出来事も含めたストレスによって生じる「ストレス障害」と捉えられます。近年、ニュースでも問題になるパワハラ、モラハラなども、トラウマの大きな原因の1つです。

いじめや家庭内の不和はもちろん、親が親として適切に振る舞えていない家族の機能不全もとても重大な影響を及ぼします。本人も自身がトラウマを負っていると気がついていないこともしばしばです。

そうした日常のストレスによるダメージの結果、「緊張しすぎる(過緊張)」「気を使いすぎて人とうまく付き合えない(過剰適応、対人関係での過敏さ、繊細さなど)」「仕事がうまくいかない」「集中できない」「不安が強い」「うつっぽい」、感覚過敏や鈍麻など冒頭で触れたHSPで説明されるようなさまざまな症状も含め、私たちが日々経験する身近な困りごと、生きづらさとなって表れるのです。

みき いちたろう 公認心理師

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みき いちたろう / Ichitarou Miki

三木 一太朗。大阪大学文学部卒業、大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。在学時よりカウンセリングに携わる。大学院修了後、大手電機メーカー、応用社会心理学研究所、大阪心理教育センターを経て、ブリーフセラピーカウンセリング・センター(B.C.C.)を設立。トラウマ、愛着障害、吃音などのケアを専門にカウンセリングを提供している。著書に『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)、『プロカウンセラーが教える 他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)がある。雑誌、テレビなどメディア掲載・出演も多い。

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