書籍も多数「繊細さん」ブームに潜んでいる弊害 HSPの概念だけでは説明できない「生きづらさ」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そんなHSPブームの陰で、生きづらさの原因を説明するものとして、長年のさまざまな調査や研究の積み重ねにより特に注目されている領域があります。それは、「発達過程におけるストレスの影響」です。

例えば、子どもの前での夫婦喧嘩は、直接的な虐待以上のダメージが生じることをご存じでしょうか? 夫婦喧嘩なんてどこにでもあるし、そんなことはたいしたことではない、などと思っていないでしょうか? 

夫婦喧嘩を目撃することで脳にダメージ

実は、脳科学での調査によって、子どもが夫婦喧嘩を目撃することで脳にダメージが生じることがわかっています。これが成長してからの生きづらさの原因となります。そのため、子どもの前での夫婦喧嘩は、現在では「面前DV」と呼ばれ、児童相談所が介入する事案となっています。

発達過程での過度なストレスは、「発達性トラウマ」、あるいは「逆境的小児期体験(ACE:Adverse Childhood Experiences)とも呼ばれています。実際に、アメリカにおいて保険会社が協力し数万人が参加する大規模な調査が行われています。

その結果、小児期に逆境体験を経験した人は、成長してから、うつ病などの精神障害、糖尿病、脳卒中、心臓疾患などのリスクが数倍から数十倍に跳ね上がることがわかっています。そして、小児期に逆境体験を経験していないと答えた人は3分の1と、想像以上に多くの人が逆境体験を経ているというのは驚きの結果です。

さらに、「愛着(Attachment)」という観点からも厚みのある研究が行われており、子ども時代の親の関わりがその後の人生や健康、対人関係に大きな影響を及ぼすことが知られています。それらは「愛着障害」と呼ばれ、日本でも関連する書籍がたくさん出版されています。

そして、小児期に虐待などストレスを受けた子どもは、発達障害と酷似した症状を呈することが知られており、それらは「第四の発達障害」あるいは、「発達性トラウマ障害」と呼ばれています。発達障害とされるものの多くが実は環境由来の症状ではないか、と指摘されています。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事