成田空港周辺でうごめく「白タク」の素性を追う 「タクシーの現場はカオス」 ①東京・成田編

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当然ながらタクシー業界の反発は強い。白タクと何度も揉めたという、空港専属ドライバーであるDさんが言う。

「今の中国系白タクは2パターンあります。1つはアプリ上で決済して、待ち合わせ場所を指定して乗せること。もう1つは、到着後に客引きがタクシーの定額料金を見せながら、『8000~9000円安いよ』と直引きすることです(大手なら都内へは2万円台後半)。

あとは近隣のコンビニから配車アプリを利用し、ボスが客引きに無線で指示を出し、第3レーン(一般乗り場)で『半額以下』と格安で乗せる手法もある。さらにイギリスのある旅行会社が別の配車アプリでの送迎も行うようになったりと、まさに無法地帯化しています」

これらの白タク車両には特徴がある、とDさんは続ける。

「車種は大型のファミリーカー。ナンバーは足立や松戸、練馬に川口が多い。上記の2つに該当し、大型のスーツケースを何個も引き、3~4人で乗り込んでいるような車の大半は白タク、というのが私たちの認識です。彼らの中には『成田空港でタクシーが捕まらないから白タクを利用している』と逆ギレする人もいました」

2023年12月には国土交通省や千葉県警察、千葉県タクシー協会が白タク対策を協議した。その効果もあってか、付近には至るところに白タク行為の注意喚起があり、実際に逮捕者も出ている。

それでも白タクの運転手たちが意に解する様子はない。実際に筆者も、明らかに白タクと思われる家族連れを引き連れた車の運転手を直撃したが、「トモダチ。ダイジョウブ」とだけ言い残し、駆け足で車に乗り込み発車していった。

「正直、日本人の客は重要視していない」

成田空港のタクシーは、昨春には70台前後にまで減少していた。現在は約110台程度まで回復しているというが、それでもコロナ前と比較すると、10~20台ほどは稼働していないことになる。その影響について、成田で勤務歴8年になるEさんに聞いた。

「成田で言うなら、今の利用者の約8割が外国人。中でも欧米系がいちばんで、次いでアジア系。白タクがあるということで中国系も多いですよ。去年は1日で都内へ3~4往復していた。1日平均売り上げも10万円に届き、ちょっと異常な状態でした。だから正直、われわれは日本人のお客さんを重要視していない。今は少しずつ台数が戻ってきたから、2往復くらいだけど十分いい。それでも、『もし白タクがいなければ』と思うと悔しさもある……」

タクシー不足の影響は、確かにドライバーに一時的な恩恵を与えていた。その一方で利便性の視点では、タクシー利用者に対しては、すでに各地でマイナスの影響を与えている。4月からのライドシェア限定解禁など、規制緩和を見越してタクシー業界は供給回復を標榜するが、早急な対応が求められそうだ。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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