結局、生成AIはビジネスでどう使われているのか 浸透は速いが、使用はいまいち広がらない現実

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会社の業務の中で、生成AIが導入されている割合を見てみよう。野村総合研究所では、自身の仕事における業務の中で、具体的に、「生成AI」を用いたツール・アプリケーションを導入している割合を調査した。

生成AI の業務への導入状況

一部の業界では急速に導入が広まっている

その結果は、生成AIの導入率について、業種を問わず就労者全体で見ると、2023年の5月の時点では9.7%であったのに対し、10月では12.1%となっている。10月の時点では、実際に業務で使っている割合が4.4%で、業務に使えるかどうかを具体的に試している割合が7.7%となっており、合わせて12.1%の就労者が業務で生成AIを導入している可能性がある。

業種別で見ると、IT・通信、金融・保険などの業界で生成AIの導入率が高くなっている。IT・通信業では、システム開発などの業務において、ドキュメント作成やプログラムコード作成などで導入が始まっていることが考えられる。金融・保険などのサービス業では、カスタマーサービスの合理化のための利用や、営業支援などで活用している例が多く見られている。

2023年の5月から10月にかけて、生成AIの導入率が拡大した業種としては、5月の時点ですでに導入率が高かったIT・通信、金融・保険などの業界に加えて、建設・土木、運輸・物流などにおける業界での導入が進んでいる。建設や運輸における業務効率化や最適化などの工程での生成AIの活用が進んでいると考えられる。公共分野においても、導入率が3.4%から6.8%と倍増しており、絶対水準は低いものの浸透が急拡大している業種といえそうだ。

一方で、卸売・小売、医療・福祉、その他サービスなどの業種では、5月から10月にかけての生成AI導入は進んでおらず導入率は10%を下回る水準となっている。これらは、AIによる自動発注や、創薬へのAIの活用などが、以前から検討されてきた業界である。ただし、AIを業務に使う方法のレベルが高く、一部の企業では積極的に利用されているが、多くの企業に広く浸透するにはまだ時間がかかりそうだ。生成AI活用のユースケースが浸透すれば多くの企業で導入されるようになるだろう。

ChatGPTが発表されてから、わずか半年で9.7%の就労者が生成AIを利用し、さらに1年後の2023年10月では12.1%まで導入が進んだ。生成AIの具体的な活用の仕方が共有されるようになってきており、企業の業務の中で、今後も急速に生成AIの導入は進んでいくものと考えられる。

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