台湾の日系自動車向け部品会社で強制労働の疑惑 トヨタ、日産、ホンダ、三菱はどう答えるのか

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未来への希望もある。私たちの調査によって、トヨタやGMなど世界最大級の自動車ブランドの一部が台湾のサプライヤーにおける強制労働リスクにも対処するようになったのである。

GMは、「当該のサプライヤー(LMW)との取り組みに加えて、他の台湾のサプライヤーともこれらのリスクに対処するために積極的な措置を講じている」と述べた。

トヨタは技能実習生によって支払われている紹介料について、日本のサプライヤーの大半にアンケート調査を終えており、台湾でも同様の取り組みをこれから実施すると説明した。

「日本で実施した人権デューデリジェンスの取り組みを活かし、台湾の出稼ぎ労働者と国瑞汽車で働く出稼ぎ労働者の状況を確認中だ」と、トヨタは述べている。

ほかの日本の多国籍企業もすでに労働者と協働し、海外での強制労働リスクに対処している。しかし、それは被害が発生した後、活動家やジャーナリストによって報告を受けた場合に限られる。

キヤノンは最近、出稼ぎ労働者とさまざまな問題について話し合った後、台湾拠点における強制労働のリスクに対処した。同社の出稼ぎ労働者には2022年12月に採用手数料が払い戻され、元労働者には2023年3月に払い戻しがなされたとキヤノンは明らかにした。ただし、払い戻し額の開示は避けた。

自主的責任から法的説明責任への移行を

LMW、国瑞汽車、台湾本田で明らかになったいずれの問題も、台湾では違法ではないようだ。日本には、企業に対し海外での強制労働リスクに対処するよう義務付ける法律はない。

2022年、日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を発表した。しかしその遵守は任意であり、法的拘束力はない。このガイドラインは企業の倫理的責任に言及しているが、企業に対し法的に何かを要求するものではない。日本企業は高い倫理的責任を表明しながら、その方針を実践しない場合に制裁を受けずに済むのである。

世界のほかの国々では、そのような任意のガイドラインが法的拘束力を持つ要件によって置き換えられつつある。大企業は、それを受けて海外のサプライチェーンにおける強制労働やその他の不正行為を回避するようになる。

フランスやドイツなどの国は最近、大企業に対して海外のサプライチェーンでの人権侵害を防止するよう義務付け、違反すれば政府による制裁のリスクを負うことになる法律を採択した。

アメリカ、カナダ、メキシコなどでは、強制労働による物品製造が疑われる場合、税関当局による国境での輸入差し止めを許可する法律がある。EUも同様の法律を採択する見通しだ。韓国やオランダなども法案について議論している。

日本は、法的拘束力のない自国のガイドラインをそのままにするかもしれない。しかし、大企業の責任を問う法的拘束力のある要件への置き換えが国内で進まなかったとしても、強制労働に関する諸外国の法律が日本企業の責任を追及することになるだろう。

その動きはすでに始まっている。そうした変化に適応しない企業は、市場にアクセスできなくなったり、海外で罰金やその他の罰則リスクを負う可能性がある。何もしないという選択肢はもうすぐ無効になるのだ。

ピーター・ベンツェン 調査報道記者、思想史家

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Peter Bengtsen / Peter Bengtsen

調査報道記者、思想史家。企業倫理、人権、労働問題に関する取材に従事。グローバルサプライチェーンにおけるデューデリジェンスにも精通している。Open Democracy、Global Policy Journal、Le Monde外交ブログ、The Deplomat、ヨーロッパ各国の消費者関連雑誌などに寄稿。オーフス大学で思想史と政治理論の修士号を取得。履歴書や、学術誌やビジネス誌への寄稿の概要を含む詳細については、LinkedInプロフィール参照。

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