台湾の日系自動車向け部品会社で強制労働の疑惑 トヨタ、日産、ホンダ、三菱はどう答えるのか

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取材に応じた全員が、台湾の紹介業者からも毎月サービス料を請求されていると述べた。しかし、誰一人としてサービスを受けていると感じてはいないという。彼らが支払うサービス料は、3年間の契約で基本給2カ月分に相当する。労働者の給与明細にこの手数料の記載はない。

労働者はまた、管理職による罰金や懲罰的行為についても説明してくれた。

寮の夜間の門限を破ったり、その他の規則に違反したりした場合、身分証明書が没収されるのだ。「お金を支払わないと、身分証明書を取り戻すことはできない」と、あるフィリピン人労働者は語った。

労働者が工場でミスをした場合には、罰金が科せられる。

「私たちが何かミスをすると、台湾の人材紹介業者に連絡が行きます。そして全員が事務所に招集され、マネージャーと人材紹介業者の前で犯したミスについて説明するよう求められる」とインドネシア人労働者は語った。「文句を言う勇気はありません。クビになれば、どうやって借金を返せるでしょうか」と、この労働者は厳しい立場をこう説明した。

仕事を得るために高い借金を背負った労働者は、過酷な就労条件に耐えねばならないと感じるようになるかもしれない。というのも、借金によって仕事に縛りつけられているからだ。

国際連合の専門機関である国際労働機関(ILO)によれば、これは債務拘束と呼ばれており、強制労働の重要な指標(またはリスク)とされている。取材対象者が経験した身分証明書の没収、脅迫、威嚇、そして脆弱性(弱い立場)の悪用も、強制労働に該当する可能性がある。

トゥアンさんとその同僚の状況は、台湾の出稼ぎ労働者の間では決して珍しいものではない。

彼らの多くが強制労働に巻き込まれる危険にさらされているのだ。海外の人材紹介業者が請求する高額の紹介料、現地の仲介業者が請求する避けられない手数料、パスポートの没収、職場変更に対する制約のほか、さらなる虐待に対するあらゆる固有の脆弱性が、国連機関や専門家、メディアによって長年にわたり広く報告されている。

ところが、多くの外国企業が台湾のサプライヤーと何十年もの取引があるにもかかわらず、こうした問題をどういうわけか、いまだに見逃している。

日系自動車会社に関連する強制労働リスク

台湾における最大の産業は電子機器産業だが、自動車産業も重要だ。自動車関連の企業はおよそ3000社あり、台湾のGDPの3%を占めている。日本は、アメリカ、欧州連合(EU)、中国とともに台湾製自動車部品やコンポーネントの上位輸入国である。

前出のLMWは、何十年にもわたって台湾の自動車産業の一角を担っている。同社の出稼ぎ労働者は、トヨタ自動車、三菱自動車、ホンダ、日産自動車向けの自動車部品を製造している。また、LMWは福特六和汽車(Ford Lioho)とゼネラル・モーターズ(GM)の直接のサプライヤーでもある。

日本の大手自動車メーカーは、台湾企業から自動車部品を調達している(撮影:梅谷秀司)

これらの企業はいずれも会社の方針で強制労働を容認しないと強調している。LMWは長年にわたり、これら大企業のために自動車部品を製造してきた。それなのに、LMWの従業員はなぜ今も、強制労働のリスクにさらされているのだろうか。自動車各社はこの問題に対処するつもりがあるのだろうか。あるいは、強制労働を容認しないという会社方針は実践されているのだろうか。

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