「お見舞い」「談話」北朝鮮が日本に発信する意図は? 日本が思っている以上に北朝鮮の対日姿勢は一貫している

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これもその2日前となる同年5月27日に岸田首相が「私自身、わが国自身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことがきわめて重要であると考える」「大局観に基づき、地域や国際社会の平和と安定、日朝双方のため自ら決断していく」と発言したことを受けて発表されたものだ。

前出の金与正談話は、朴尚吉談話が出されてもこれといった行動が見えない岸田首相にその内容を再び想起させようと、岸田首相が前向きな発言をしたタイミングをとらえて出されたものではないか。

ボールは岸田首相の手に

本来、金副部長は対韓・対米関係を担当しており、対日関係は彼女の管掌から外れている。それでも、金副部長が「個人的な見解」としてあえて発表したのも、岸田政権が北朝鮮との関係で動くのか動かないのかを見極めるための談話だったと思える。

こうしてみると、ボールは日本の手中にあると北朝鮮は考えているようだ。政治資金問題をはじめ国内問題で支持率が低下し、問題解決に汲々としている岸田首相だが、自分の発言に責任を持ち自ら述べたように、大局観を持って行動できるかどうか。北朝鮮はそこを見極めている。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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