キヤノンに見える「事業、経営陣、対話姿勢」の変化 次代の新取締役「海外営業の実力者」は副社長に

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この計画の達成のために立ち上げたのが、全社組織となる「メディカル事業革新委員会」だ。

キヤノンは2016年、東芝メディカルシステムズ(現・キヤノンメディカルシステムズ)を買収し医療機器事業に本格参入した。以来、業務や開発体制などの統合作業をしてきた。

そこでやり残した点を完成させ、買収シナジーをより高めることが委員会の狙いだ。これまでもキヤノンの技術投入によるコストダウンや製品開発を行ってきたが、生産、調達、販売といったすべての面で、キヤノンのノウハウを投入する。

新副社長の小川氏が販売改革に着手

決算と併せて公にされたのが新たな経営幹部の布陣だ。3月末の株主総会での承認を前提に、「次世代」である3人の執行役員が取締役に昇格することはすでに発表されていた。その1人、小川一登・専務執行役員が取締役副社長に就任することが今回明らかにされた。

「海外営業の実力者」。御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)は小川氏をそう評する。今年1月の人事異動に伴い日本に帰国するまで、アメリカ子会社の社長を務めていた。カナダとシンガポールの子会社でも社長経験があるなど海外市場の知見を持つ。

キヤノン経営陣
小川一登・専務執行役員(左から1人目)が取締役副社長に昇格する(撮影:尾形文繁)

小川氏は現在、グローバル販売戦略推進本部長として販売面での世界的な構造改革に着手している。事業転換に伴い製品構造が変わっているため販売体制についても見直しを図る。改革は販売経費の削減にもつながる。その効果は2025年以降に表れると見込む。

御手洗氏は現在88歳。田中稔三CFO(最高財務責任者)と本間利夫CTO(最高技術責任者)の2人の取締役副社長も順に83歳、74歳。取締役在任年数も長く、御手洗氏が42年、田中氏と本間氏も20年を超えている。「世代交代」に向け、次期社長の育成が本格的に始まったのかもしれない。

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