「旧ジャニーズ」2回の記者会見に共通する失敗 危機管理における説明責任は「被害者目線」

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1回目と2回目の記者会見を振り返ってみます。再発防止特別チームの調査結果が昨年8月29日に公表された直後、1回目の9月7日の会見は、トップが出て調査結果をどう受け止めて今後どうしていくのか、が注目された点でした。藤島ジュリー景子社長が出てきて、被害者へ謝罪し、補償の方針を示したことは評価できる内容でした。ここまでなら、最重要ステークホルダーは被害者だと印象づけられ、キーメッセージが明確です。

しかし取引先へのイメージ回復を急いだのか、人気タレントでもある東山紀之新社長が同席してしまったために、キーメッセージがぶれてしまいました。お詫びと補償、責任をとって社長を辞任するといったインパクトを弱めてしまったのです。東山新社長がもたらすマイナス面の洗い出しもできていなかったのではないでしょうか。それが垣間見えるのが会見の運営です。

廃業と新会社設立を同時発表する違和感

最初に指名したメディアは『しんぶん赤旗』の記者で、世論を代表するメディアではありません。運営会社にメディアの知識が欠如していることを露呈していました。しかも最初の質問は東山新社長のハラスメント疑惑と資質について。一気に流れを作ってしまい、東山新社長のハラスメント疑惑や資質の質問が多発。結果として、ジュリー社長の謝罪と東山新社長と二つの印象が強く残ってしまいました。

では、どうすればよかったのか。ステークホルダーを被害者に絞り、ジュリー社長が事実を認め、謝罪、補償の方針、辞任表明、今後のスケジュールを説明し、東山新社長と新体制は改めての発表とすれば、謝罪の印象が強く残ったはずです。ジュリー社長が一人では会見を乗り切る自信がなく、東山氏と井ノ原快彦氏を選んだのでしょうか。だとするなら、二人は新体制を構築するためのプロジェクトメンバーとして登壇させれば、東山氏が新社長にふさわしいかどうかといった質問は回避できたはずです。

2回目の10月2日の会見も同じ失敗を繰り返しました。廃業の発表といった過去への決別としての決意表明という重大な見せ場に軸を絞らず、新会社設立も含めた二つのキーメッセージにしてしまいました。しかも、「SMILE―UP.」、新会社設立(名称はファンクラブで公募)と後ろのスクリーンに表示される形式で華々しい印象となり違和感を与えました。

この時一番重要だったキーメッセージは「廃業」だろうと思います。最初に読み上げられたジュリー前社長の手紙の「ジャニーズ事務所を廃業することが、私が加害者の親族としてやりきらねばいけないこと」「ジャニー喜多川の痕跡を、この世から一切なくしたい」とする内容は、過去と決別する強いメッセージ力で好感が持てました。しかし、ここでも新会社の社長の発表を混在させ、しかも再び東山氏と井ノ原氏が登場するという場面。せっかくの廃業と過去への決別メッセージが弱まってしまいました。

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