「旧ジャニーズ」2回の記者会見に共通する失敗 危機管理における説明責任は「被害者目線」

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危機管理のプロであってもダメージの収束を早くしたいがために、すべてを出し切ろうとする方針を立て、メッセージをてんこ盛りにしてしまうことがあります。ここに広報のプロが介在する意義があります。言いたいことを絞り、効果的にメッセージを作り、メディアの特性を考慮して、見出しをイメージできる力が求められるからです。

三つめのポイントは「ポジションペーパー」を必ず作成することです。2回の会見で文書化された配布物がなかったこともわかりにくさを増大させたと言えるでしょう。危機発生時には誤解を回避するため、自分たちの方針を記載した「ポジションペーパー」を作成します。

プレスリリース、ステートメント、声明文、見解書といった言い方がされる場合もありますが、筆者は現時点での考え方をまとめた文書の名称としては、「ポジションペーパー」がわかりやすいのでこの言い方を好んで使用しています。誰に何を伝えるのか、自分たちも明確になります。自ら作成すれば、謝罪と新社長、補償と新会社設立が一つのペーパーでまとめるのがいかに困難か、違和感を持つことができるため、ダブルメッセージによるわかりにくさを回避できるとも言えます。

組織のガバナンスでマスメディアが果たすべきこと

企業とマスメディアは微妙なバランスで成り立っている関係といえます。平時における記者との付き合いは、広報用語ではメディアリレーションズと言われ、良好な信頼関係を築くための活動と位置付けられています。もちろん、信頼関係があっても組織の不祥事発生時にはマスメディアは報道すべきです。

報道は単なる批判ではなく、多様な視点を読者・視聴者に提供し、社会の改善に繋げるための気づき、きっかけとする位置づけになることが期待されています。再発防止特別チームによる調査報告結果の会見は、その役割を果たす重要な機会であったといえます。

しかし、このときには事実認定の方法にばかり繰り返し質問があり、根本原因とされたジャニー喜多川氏の性嗜好異常や、メリー喜多川氏の恐怖政治についての質問が皆無でした。これではガバナンスとしての役割は果たせません。報道機関は責任追及だけではなく、本質に迫る深い思考力や根本原因をえぐり出す質問力を養ってこそ、組織のガバナンスに貢献できると、筆者は考えます。

石川 慶子 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 副理事長

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いしかわ けいこ / Keiko Ishikawa

東京都出身。参議院事務局勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作に従事。1995年から広報PR会社に所属し、2001年に独立。リスクマネジメントを学び、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動を開始。経営層に対し、リスクマネジメント訓練やメディアトレーニングのほか、危機発生時のマスメディア対応、ポジションペーパー作成等のメッセージ関連のコンサルティングを提供している。

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