春闘「中小企業の賃上げ」が握るマイナス金利解除 「円安の行方」も春闘の結果に左右される?

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そのような環境を行政の力で変えるべく、内閣官房と公正取引委員会は昨年11月末、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(ガイドライン)を公表した。

発注者側に対し、労務費転嫁について経営トップが関与すること、下請けが要請しなくても協議の場を設けること、労務費転嫁の根拠資料を過度に要求しないことなどを明示している。

その中身は、傘下に中小企業の労組が多く、労務費の価格転嫁を訴えてきたJAM(ものづくり産業労働組合)の安河内賢弘会長が「JAMの議案書のような書きぶり」と驚いたほどだ。「あとは実効性をどう担保するか」(安河内会長)。公取などは各地域で説明会を開き、ガイドラインの周知に努めている。

ガイドラインには、コストのうち労務費の占める割合が高い業種への調査結果として、受注者が賃上げ分の値上げを要請して認められにくい業種「ワースト10」、認められやすい業種「ベスト10」も掲載されている。

労務費の転嫁率「ワースト10」業種
労務費の転嫁率「ベスト10」業種

これほどまでに中小企業の労務費転嫁が取り沙汰されるのは、雇用の7割を占める中小企業で賃金上昇が実現しなければ、構造転換とはならないからだ。

中小では労組の組織率が低く、多くが春闘の蚊帳の外。連合は賃上げの機運を高めて波及させることで、労組の存在意義を示す狙いだ。加盟組合に対しても、経営側との交渉の場で自社の価格転嫁の受け入れについて議題とするよう促す。

日銀も春闘を注視している

春闘の賃上げと中小企業の労務費転嫁を別の角度から注視するのが日銀だ。物価上昇率2%の目標が賃金上昇を伴い実現すると見通せれば、マイナス金利を解除する方針を示してきた。

現状は、物価上昇率が2%を超える中、一時的な輸入インフレを反映しただけで賃金上昇が終わることを恐れ、大規模な金融緩和を維持している。目指す「物価と賃金の好循環」に至るには、賃金が物価に跳ね返ることが残るピースだ。

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