「ゆで太郎が提供しているのは日常食なので、華々しくはないかもしれない一方で、着実な商品を心掛けています。商品会議では主に味・ボリューム・価格の観点から、新商品とともに既存商品のブラッシュアップも行っています」
ほっかほっか亭には「ケンカ売っているのか」
そばチェーンとしては珍しいのり弁がラインアップに加わったきっかけは何だったのでしょうか。先述した通り、池田社長は「のり弁の祖」とも呼べるほっかほっか亭出身です。1976年に創業したほっかほっか亭が「のり弁当」として販売した商品こそ、現代のり弁のルーツとされています。
かつて池田社長がほっかほっか亭に入社したきっかけも、のり弁でした。昭和32年生まれの池田社長にとって、のり弁はお母さんが作る弁当としての原風景だったそう。その原風景を再現し、260円で展開したほっかほっか亭ののり弁は「ルーツ、原点の商品」とも語り、一目惚れのように魅力を覚えて入社したそうです。
そう聞くと、今回のテーマであるゆで太郎ののり弁は、さぞ肝いりで開発が進んだのかと思いきや、意外にもそうではないようです。
「のり弁が生まれたのは定番商品のブラッシュアップがきっかけです。薬味そばなどで使う鰹節を口当たりの良い極薄削りの本枯節に、あとは海苔を播磨灘産の一番摘みにしたり、ちくわを高品質なものへリニューアルしたり改良を加えていたんです。そこで、ふとあるとき社内で雑談していて『おかかと海苔とちくわがあれば、あとは白身魚さえあればのり弁ができるのでは』と思い付いたんです」
それまでゆで太郎のミニ丼メニューにはカツ丼やカレーなどがあった一方で「1品、毛色の違うものが欲しかった」とも池田社長は振り返ります。そこから白身魚の調達先を探し、実際にのり弁を作ってみたところ、違和感のない仕上がりに。ちなみに「丼」で提供するのに名前が「弁」なのは「『のり丼』だと海苔を敷いただけの印象がある」ことから、洒落も交えつつ決めたそうです。
偶然から生まれたゆで太郎ののり弁は、池田社長と同じくほっかほっか亭出身であるゆで太郎システムの営業部長・商品部長も納得の商品になりました。ちなみにほっかほっか亭には旧知の方も多く、ゆで太郎からのり弁を出す際には笑いながら「ケンカを売っているのか」といわれたとか。
現在も販売しているミニのり弁は2020年11月に発売し、2022年4~8月にはミニサイズ以外に、より豪華な「満腹太郎のり弁」の単品とセット商品も展開。しかし、もともとそばがメインであり、フルサイズの丼はそこまで人気が出ないことから、現在はミニサイズのみを展開しています。ミニのり弁の売れ行きについて池田社長は「『まあ、こんなもんかな』と思う程度」と話します。安定感がある商品がゆえに、爆発的なヒットには至らないながらも毎日コンスタントに売れているそうです。
ゆで太郎が提供するのり弁の特徴は、揚げたてであること。朝昼の過度なピーク時を除き、揚げ置きはしません。冷めてもおいしいのがのり弁ではありますが池田社長は「弁当チェーンののり弁は、持ち帰るうちにフライがしっとりしてしまいます。一方、ゆで太郎ののり弁は基本的にできたてを店舗で食べていただくのが強味です」とし「その点は『弁当チェーンののり弁よりも、うちの方がおいしい』と自信を持っています」と胸を張ります。
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