岡山の廃線「片上鉄道」代替バスは別ルートの事情 貨物の流れから人の流れへ交通路が再編された

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吉ヶ原から終点の柵原までは1.3km。旧柵原町は久米郡の町で、中央町、旭町と2005年に合併して美咲町となった。久米郡はJR津山線沿線にまで東西に広がる地域で、やはり津山への指向が強いところだ。律令国では美作国で、備前国に属する赤磐市や和気町との文化的、経済的つながりはもともと薄かったと思われる。

それでも市町境が錯綜しているため、美咲町は周辺地域の利便も図って、赤磐市、津山市と共同で、津山駅前―柵原病院前間3.5往復のバスを走らせている。そのうち一部が赤磐市吉井支所まで直通しているのだ。ただ、片上鉄道を代替するような役割ではない。

地理的な条件もあろうけど、市町村営バスは自治体のエリア内だけを相手にしている例を各地で見てきただけに、住民サービス重視の姿勢が、ここでは強く感じられた。美咲町は合併した3町間を結ぶ町営バスも運行している。

寂れた感じがしない終点

吉ヶ原から柵原病院前までは、適当なバスの便がないので歩いて観察。鉱山従業員の社宅が今も残る風景を眺める。完全に人が去ってしまった北海道や九州の炭鉱とは違い、まだ現在も同和鉱業系の事業所が柵原駅跡の周囲で操業している。人口は残っており、寂れた感じはしない。

中鉄北部バス 柵原病院前バス停
中鉄北部バスの柵原病院前バス停(筆者撮影)

柵原病院前のバス停は、中鉄北部バスが病院前の幹線道路。柵原星のふる里バスと美作市営バスが病院の裏と分かれており、いずれも病院敷地内には乗り入れていない。柵原駅を名乗る柵原星のふる里バスのバス停もあるが、今はもう鉄道の痕跡はない。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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