実写化「ゴールデンカムイ」驚嘆の感想で溢れる訳 原作漫画ファンも初見の人も圧倒されたこれだけの理由

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多くの人が挙げるように、この作品は「アイヌ文化」に対するリスペクトが高く、現代社会が失った、根源的だけど懐かしさもある、そんな世界観が広がっている。

その伝承者とも言えるのが、主人公と行動を共にするアイヌの少女アシリパだ。彼女は登場時点から、ヒグマをも倒す猛毒の矢や、厳しい自然を生き抜くサバイバル技術などに長けている。しかも、単なるスキルというより、積み重ねられたアイヌの文化がバックボーンにあるので、哲学的だ。

杉元と行動を共にすることになるアイヌの少女、アシリパ(写真:映画「ゴールデンカムイ」公式サイトより)

それらは時折出てくるアイヌ語に現れており、「マタカリブ(冬を徘徊するもの)」「ウェンカムイ(悪い神)」といったネーミングがなんとも奥深い。

ベースとなっているのは、「大地の哲学」とも呼ぶべき、自然への畏怖の念だ。「自然を汚してはならない」という先祖代々伝わる精神文化、世界観には、現代に生きる我々にも強く響くものがある。

例えば熊を狩猟した時には「肉は食い、毛皮は洋服にし、内臓は薬にする」とさばいていくが、作品を見ていると、それらの行動原理は理にかなっており、無駄がない。そうした世界観に浸ることができるのがこの作品の楽しさの一つであろう。

一方で、アシリパは、自然に寄り添った生き方をするからこそのドライさも見せる。出会ったばかりの杉元に放つ「兵士なら戦え 弱い奴は食われる」というセリフが象徴的だ。杉元に対する問いかけが、つねに本質をついていて、どこか自分の価値観を見直させられるようなところがあるのだ。

山崎賢人演じる「不死身の杉元」の本質

そしてそんなアシリパと一緒に、金塊探しをするのが「不死身の杉元」と言われる主人公・杉元佐一だ。戦闘において無類の強さを誇り、傷の治りも早く、とにかくタフな男だ。

アクション・エンターテインメントにおいては、主人公の強さは欠かせない要素であり、そこに痛快さがあるが、杉元はキャラクターの種類としては「ダークヒーロー」と分類されるタイプだ。

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