日本の支援終了、「軍政下」ミャンマー鉄道の現状 線路改良や新車両、運転本数激減で「塩漬け」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その結果、ヤンゴン市内の都市鉄道(ヤンゴン環状線)の改良、ヤンゴンと第2の都市マンダレーを結ぶ都市間鉄道の改良という2大プロジェクトが日本のODAによって動き始めた。これに付帯する技術協力、無償資金協力を合わせると合計13に及ぶ巨大プロジェクトとなり、2013年から順次スタートした。

ヤンゴン環状線 日本製踏切
日本製の装置一式が導入されたヤンゴン環状線の踏切(筆者撮影)
ミャンマー キハ40 元JR東日本
2020年、円借款による新車の調達遅延のために導入された元JR東日本のキハ40系気動車(筆者撮影)

だが、これらが本来あるべき形で実を結ぶことはなかった。2021年2月にミャンマー国軍はクーデターによって政権を掌握、ミャンマーは再び事実上の軍政に転じた。これは欧米を中心とした国々から非難の対象となり、経済制裁に踏み切る国も出てきた。日本も西側諸国と足並みを揃える形で、経済制裁こそ行わないものの、人道支援目的以外の新規ODAを凍結した。軍政を支援、認めていると見なされるからである。ミャンマー側での受注者や受益者が国軍系の企業である場合、軍への資金の流れを絶つことができない。

契約済み工事の完了で「幕引き」に

その結果、新規ODAが凍結されたのみならず、すでに着工したプロジェクトに対しても、クーデター前に業者の選定(契約)が済んだパッケージが完了次第、終了することが決定した。

ミャンマー キハ11
ヤンゴン環状線を走る元JR東海のキハ11形気動車と、ホームが高床化された駅(筆者撮影)
ミャンマー 日本語ステッカーの残る車両
日本語のステッカーはそのまま残されている。2020年に導入されたグループの一部はネピドー工場で現地化改造されている(筆者撮影)

例えばヤンゴンとマンダレーを結ぶ幹線鉄道改良は、全長約620kmの区間のうち、地上側の整備はフェーズⅠにあたるヤンゴン―タングー間(約260km)の契約済みパッケージのみが実行され、完工することなく終わる。フェーズ2のタングー―マンダレー間については2018年にL/A(借款契約)調印が済んでいるが、調達契約が済んでいる車両だけが納入されることになる。

2023年は各プロジェクトの追い込みの1年で、クーデター前に受注が済んでいた各パッケージのいくつかが完了した。2024年現在は、ヤンゴン―タングー間の残工事が細々と進められているほか、今年前半から順次、「ヤンゴン環状鉄道改修事業」向け、および「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ(第一期)」向けのスペインCAF製の電気式気動車計156両が納入される予定だ。

ヤンゴン―マンダレー間改良プロジェクトの目玉であった日本製の電気式気動車24両についても、営業に供されることのないまま、メーカー保証期間が終了する。これをもってすべてのプロジェクトは幕引きとなるもようである。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事