日本の支援終了、「軍政下」ミャンマー鉄道の現状 線路改良や新車両、運転本数激減で「塩漬け」
ヤンゴン市内は、クーデターの影響がゼロとは言えないながらも、ほとんどの場面では従来とほぼ同じ光景が広がっていた。世界から非難され、経済制裁が科されている国の都市とは、これを見ただけではわからない。
一方、ヤンゴン中央駅の構内は、異様な静けさに包まれていた。長距離列車こそほぼ平常通りの運転となっているようだが、圧倒的に発着本数の多い環状線や、ヤンゴン近郊区間の普通列車や中距離列車のほとんどが運休になっている。
以前は1時間に何本もの列車が到着し、大勢の乗客が降りてくる光景を目にすることができたが、今やヤンゴン中央駅を発着する列車は西方面(インセイン、環状線時計回り)に5本、東方面(トウジャンガレー、環状線反時計回り)に10本しか運転されていない(2023年7月時点、駅窓口貼り出しの時刻表による)。
増発のための信号機は生かされず
朝7時に駅へ赴くと、きっぷ売り場もまだ開いていない。クーデター前は駅ホーム上にJR東日本の観光列車「リゾートしらかみ」を模した売店があったり、日本語の路線図や広告があったりしたが、跡形もなく撤去されていた。日本の援助で駅前周辺の歩道上に設置された街路地図も撤去されているか、あるいはJICAのロゴもろとも塗りつぶされていた。ホームの一角は鉄道警察の詰め所代わりになっており、十数人がたむろしている。
7時台の発着は、45分ごろに東方面から5両編成の気動車が到着するのみだ。これは鉄道警察の通勤列車になっているのか、ライフルを構えた警察官がぞろぞろと降りてきた。8時台も、30分ごろに西方面から4両編成の気動車が到着するのみ。朝ラッシュ時の列車はこの上り・下り2本だけで、都市鉄道としての機能を完全に失っている。切符売り場は、7時45分発の利用者のために、7時半になってようやく開いた。当駅からだとラッシュとは逆方向のため乗客はもともと少ないと思われるが、きっぷを買い求める客は5人ほどだった。
筆者は別日にこの列車に乗車した。今や環状運転する列車は反時計回りに1日2本、時計回りは1本しかない。列車には3~4人の鉄道警察が乗り込んで車内を巡回しており、1人は先頭車の貫通扉からライフル銃を構えて前方を監視している。次第に乗客が増えて立ち客も出るほどになるが、ほとんどは行商人だ。大きな荷物を持ち上げて乗車しなければならず、鉄道警察官は彼らを手伝い、その後も世間話をしている。不思議な光景だ。
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