日本の支援終了、「軍政下」ミャンマー鉄道の現状 線路改良や新車両、運転本数激減で「塩漬け」
市バスのほうがよほど若者で混雑しているが、そちらには警察も兵士も乗っていない。鉄道は国有財産であるがゆえに、民主化運動を口実にした過激グループの標的になりやすい。実際に地方部などを中心に運行妨害が起きているため、鉄道施設の警備を強化するのは一理あるのだが、大学生がピンポイントで狙われたのは軍政批判の疑いをかけられたからと推測される。
SNS上の一般市民による政府批判の書き込みは逮捕の対象になっている。ツイッター(X)やフェイスブックなどのSNSは通信規制されていたが、VPNを使ってアクセスしている人も多い。鉄道施設内で不当に逮捕されるような状況であれば、仮に列車本数が増えても利用者離れは避けられない。
日本はミャンマーに何ができるか
しかし、このまま日本からの支援が止まれば、西側諸国に同調しない中国をはじめとする国々が勢力を拡大するのは明らかだ。中国は引き続きミャンマー国鉄ネピドー工場で機関車のノックダウン生産を続けており、日本勢が撤退した後のヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業を引き継ぐ可能性も大いにある。
軍による横暴は決して許されるものではないが、軍政か、アウンサンスーチー氏率いるNLD政権か、という二項対立のみで判断するのはいささか安直ではないだろうか。現地の状況はより複雑であり、親軍派、民主派のみならず、それに属さない地方部の少数民族や、反政府的武装組織、さらにはロヒンギャ問題に見られるような、仏教原理主義的なグループの存在もある。結局、NLD政権はこれらをまとめることができず、最終的に軍の不満が爆発するに至ったわけで、国内での評価も割れている。どうして軍との関係打開が図れず、そして地方部の問題を解決できなかったのか、総点検すべきではないだろうか。
民政、軍政の入れ替わりの歴史を繰り返すだけでなく、ミャンマーが分裂する恐れすらある現状、これまでの多額の経済支援を無駄にしないためにも、日本政府には、欧米諸国とは別のアプローチで、ミャンマー政府への働きかけを期待したい。インフラ支援とひとくくりにされてしまうが、鉄道も道路も、そしてダムや橋も、突き詰めれば人道支援である。ミャンマーに明るい未来が訪れることを願っている。
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