日本の支援終了、「軍政下」ミャンマー鉄道の現状 線路改良や新車両、運転本数激減で「塩漬け」
2023年にはこんな動きもあった。2015年にJR東海から譲渡された84両の気動車のうち、ミャンマーのティラワ港、そして名古屋港にて「足止め」されていた車両が一転、ミャンマー国鉄に引き渡され、運行を開始した。2023年末までに環状線のほとんどがこのグループの車両に置き換えられており、従来の車両は地方部に転出したとみられる。8年にも及ぶ港での放置期間を経ていることから数両は部品取り用となっているようだが、大半の車両が再び走行可能な状態になったとは驚きである。
これら84両の車両は日本の無償資金協力として実施されているが、債務救済無償という特別なものだ。これは債務返済が困難な国に対し、返済額と同額の無償資金協力を供与し、債務を相殺するという仕組みである。
NLD政権はこれが契約された約1年後の2016年に発足したが、同政権はその時点でミャンマー国鉄に引き渡されていなかった31両の受け取りを拒否していた。2011年発足の前政権は民政移管後とはいえ親軍であり、さらにさかのぼって軍政時代からの置き土産とも言える支援は受け取らないという強い姿勢が見てとれた。が、2021年のクーデターで再び事実上の軍政に戻り、人道支援以外のODA停止が確実になる中、駆け込み的に受け取りを表明したものと思われる。
にぎわう市内、閑散とした駅
2023年7月、筆者は4年ぶりにミャンマーの地を踏む機会を得た。一歩市内に出れば、車はひっきりなしに走り、レストランもショッピングモールも賑わっており、拍子抜けした。クーデター当初の警戒態勢はなく、まれに兵士や警察官が立ってはいるが、検問をしているわけでもない。スレーパコダを背にする横断歩道の上では、若者たちが自撮りやTikTokの録画に興じている。
この周辺はヤンゴン随一の繁華街で、4年前とほとんど変わらない雰囲気だ。以前の訪問時に入ったインドカレー店も、ほぼ満席の状態で相変わらず繁盛していた。値段も以前とほぼ同じと思われる。経済の混乱で物価が上がりそうな気がするが、これも意外だった。ヤンゴン中央駅南側駅前の「シャングリラホテル」は閉鎖され、その向かいにある前回宿泊した安宿も閉まっていたが、その500mほど西にある「パンパシフィックホテル」は併設のモールとともに営業中で、多くの人が利用していた。
ただ、日系企業も参画するミャンマー国鉄遊休地の再開発「ヨマ・セントラル」の工事はクーデター以降、完全に中断しており、建物の骨組みとクレーンのみがそびえ立っていた。国鉄遊休地を活用しているという性格上、軍政権への金の流れを指摘される可能性は高いと思われたが、最新の報道によれば工事が再開されたとのことだ。
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