上司と部下が違う方向を向いてしまう根本理由 「部下を動かす」のに夢中な人が知るべきこと

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これはまさに産業革命時代のやり方だ。

議論してから投票するという、意思決定に至る構造が、決断を下す前に出る意見のバリエーション(ばらつき、多様性)を減らすものとなっている。

こうして下された決断は、「声の大きい人々の英知」と呼んで差し支えないだろう。

立場が上の人が発した最初の数字がそのテーブルを支配し、それが正解からどれほどかけ離れていても、最初の数字に限りなく近い数がそのテーブルの最終的な回答となる(ちなみに正解は130パーセントだ)。

違う数字を思い描いているメンバーは発言を控えるので、有意義な情報を得る機会や分析の機会が奪われる。

なぜそんなやり方になってしまうのか

これがグループで決断を下すときの最善のやり方でないことはおわかりだろう。だが、グループで決断を下すケースのほとんどが、これとまったく同じやり方をしている。

2015年に嵐のせいで沈没した貨物船「エルファロ」でも、このやり方が行われていた。船長が決定し、それを周囲のメンバーが後から知るというやり方だ。

エルファロは、フロリダのジャクソンビルからプエルトリコの首都サンフアンまでの航海中に、ハリケーンに向かって進んでいって沈没した(こちらの記事参照)。

近代的な無線システムや航行設備を搭載していたが、船に乗っていた33名は、全員命を落とした。

エルファロの船内で実際に何が起きたのかは、事故後、回収されたボイスレコーダーから推測できる。先に述べたように、エルファロは産業革命期のやり方に従っていた。

産業革命期のやり方とは、上司=決める人、部下=実行する人というように役割を分けて、考える仕事と実行する仕事を分断することだ。これをしてしまうと、部下からの多様な意見が出てこなくなる。

よりよい決断を下すには、異なる意見を集めることから始める必要がある。グループ全体の意見、とりわけいちばん上の立場の人間が影響を及ぼすよりも先に、各自に意見を発表する機会を与えるのだ。

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