物流24年問題、スーパーのライバル間で進む協業 九州では共配、首都圏では消費期限ルール緩和

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福岡県だけでもイオン九州は100店舗以上、トライアルは70店舗以上のスーパーやディスカウントストアを展開しており、両社は同じ顧客を取り合う地域最大のライバルだ。その競合同士が手の内を見せ合い、実例を作った影響は大きい。

これを成功体験として、研究会内では西友が西鉄ストアと共同配送に取り組んでおり、現在も空車回送距離の長いルートを中心に加盟社間で協業を模索しているという。

備品の共有化で1日30分の作業を不要に

九州物流研究会の施策はトラックの共同利用にとどまらない。足元で進めているのは、備品の共通化だ。

物流施設から店舗に配送する際、商品を敷き詰めたプラスチックの容器をカゴ車にのせてトラックで運び、カゴ車ごと店舗に引き渡す。このプラスチック容器とカゴ車はスーパーごと、あるいは納品するメーカーごとに異なり、それぞれが各社の資産だ。一部のドライバーは配送後、物流拠点でそれぞれの備品を仕分けることも業務となっており、1日30分程度かかっているという。

備品の共通化はこの作業を軽減することで、ドライバーを配送業務に集中させることができる。まだ構想段階ではあるものの、イオン九州やトライアルを中心に研究会の加盟社が地域の小売り、メーカーに協力を要請している最中であり、実際に統一される日は近いかもしれない。

都内にあるスーパーのバックヤード。メーカーや食品卸ごとにサイズや色の異なるプラスチック容器が積まれている(記者撮影)

九州物流研究会にはもう一つ野望がある。それは「物流拠点の共有」だ。倉庫やトラックはもちろん、これらに必要な労働力も共有することができれば、24年問題以降も続く物流危機、人手不足への対応策として有力だからだ。上述した備品の共有は、そのための第1段階だという。

ただ言うまでもなく、物流インフラ共有のハードルは高い。備品やシステムの共通化が必要なほか、商品原価や仕入れ量などの情報が競合に漏れてしまう恐れがあるからだ。

トライアルHDの運送子会社、MLSの望月紳司副社長は「一番大切なのは信頼関係。かけ声倒れに終わらないためにも、小さくてもいいから実績を出し続けることが重要だ」と話す。

イオン九州物流担当の楢木一郎氏は「今では各社の物流責任者と情報交換するのが日常になった。トップ同士も現場同士も会話したことのないような状況から、たった1年半でここまで変わった。思い描いている通りにはいかないかもしれないが、新しい協業のネットワークを作っていけるはず」と期待を語る。

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