物流24年問題、スーパーのライバル間で進む協業 九州では共配、首都圏では消費期限ルール緩和

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企業によって物流網の状況は異なる。子会社やグループ企業が物流を担うイオン九州やトライアルHDとは異なり、地場の中堅スーパーの中には物流を外部委託する企業も多い。

そういった企業が既存の物流網を再構築し、他社と協力するのは容易ではない。ただ九州物流研究会の加盟社の中には、委託先の物流会社に研究会の趣旨を説明し、会合に同席、他社と協業を議論するパターンもあるようだ。「物流危機という共通課題が後押ししている部分もあるだろう。苦労している点が同じ物流担当同士は打ち解けるのが早い」(楢木氏)。

首都圏では消費期限ルールの緩和へ

別の角度から物流負荷の低減を図っているのは、首都圏の物流研究会だ。国内最大手のライフコーポレーション、イオン系のマルエツとカスミ、西友やヤオコーなど、名だたる有力スーパーが参画する。彼らが進めるのは、納品期限の緩和だ。

日本の食品流通業界では全国的に「3分の1ルール」という商慣習が存在する。単純化すれば、卸売業者は製造日から消費期限までの日数のうち、最初の3分の1を過ぎた商品は小売店に卸すことができない、というルールだ。

食品スーパーなどの小売業からすれば、過剰な在庫を持つことによる廃棄のリスクが減る一方、卸業者からすれば常に新しい商品を供給する必要があり、こまめな配送が求められる。この期限を3分の1から2分の1に緩和することで、卸業者側の物流負荷を減らすことができる。

首都圏の物流研究会に参加する各社では昨年、消費期限が製造日から180日以上あるペットボトル飲料などの商品については2分の1ルールへ移行がおおむね完了している。いなげやなど一部企業では、スナック菓子など消費期限が180日未満の商品についても移行済みだという。

物流問題に対する危機意識は強まっており、各チェーンのトップ、物流担当者は「単独でどうにかできる問題ではない」と口をそろえる。競合同士の連携は結実するのか。地域スーパー連合の模索が続く。

冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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