お金・偏差値…「数字に振り回されてる人」の盲点 田内学×近内悠太「お金と贈与」トーク【前編】

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田内:先日、高校の先生に講義のオファーをいただいたんです。オファーのきっかけは、授業で「愛とお金どっちが大事か」って聞いたら、ほとんどの生徒がお金って答えたことみたいです。

おいおいちょっと、と思いました。

お金と愛はどっちが大事?

田内:お金がなくても愛があれば、家族や仲間とか身内に助けてもらえるけど、愛がないと外部に助けを求める機会が増えて、お金が必要になるんです。

世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学
近内悠太氏の著書『世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学』(NewsPicksパブリッシング)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

近内:まさにそれ、マルクスも言っていますよね。身内の中では無償で助け合うから、身内の境目、つまり外部にはお金が支払われる。『きみのお金は誰のため』を読みながら、マルクスが言っていることと同じだなと思っていました。

田内:一方で、経済学は愛の節約を研究する学問だという言葉もあるそうです。

家族は愛を燃料にして助け合っていますけど、愛は有限なので、世の中みんなのことは助けられない。その愛を節約するために、お金っていうのを発明したって話なので、お金の起源を考えると、どう考えても愛のほうが大事なわけです。

生徒の年齢だと、愛とお金って「愛した人と結婚するのか、お金持ちと結婚するのか」とかその程度で考えている気がするので、これは伝えなきゃなって思っています。

近内:生活するためにはお金が必要なので、お金に振り回されてしまうし、大事だと感じるんですよね。

田内:実際、お金を払っても、どうにもできないことのほうが多いなって気がしています。

僕の本、いろんな人に協力してもらって書いたんですけど、4年前までサラリーマンだった人が本を書いてさらに小説を書くなんて、本来無謀なわけですよ。

書くときに、有名な編集者の佐渡島庸平さんって方にもアドバイスを受けたんですけど、どんなにお金を積んでも、普通は教えてくれない方なんです。

近内:興味があったり、価値があると感じないとやらないでしょうね。

田内:実は、お金で解決できる問題って存在しなくて、お金の向こう側に、働いてくれる人がいなきゃいけないんです。

そもそも貨幣がないころは物々交換していたものが、貨幣が生まれると、お金を支払うことによって知らない人たちにも助けてもらえるようになった。

お金で解決できる問題もある“かも”しれませんけど、お金を積まれても教えないって人もいるから、結局「かも」なんですよね。

(構成:川口玲菜)

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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近内 悠太 教育者、哲学研究者

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ちかうち ゆうた / Yuta Chikauchi

1985年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。教養と哲学を教育の現場から立ち上げ、学問分野を越境する「知のマッシュアップ」を実践している。『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)がデビュー著作となる。

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