拝啓ヴィレヴァン様、"復活の秘策"を考えました 無機質な雑貨屋になってしまわないために…

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では、ショッピングモールから撤退して、路面店のみの経営を行うのがいいか。それは現実的ではない。ショッピングモール店舗がヴィレヴァン全体に占める割合はとても大きいし、何より上場企業であるヴィレヴァンにとって、そのような大胆な変更は株主が許さないだろう。

であれば、ショッピングモールの店舗は現在のまま残しつつ、「ヴィレッジヴァンガード ライト」と命名一方、路面型店舗では、権限委譲を徹底させて「毒」を回帰させ、それを「ヴィレッジヴァンガード ポイズン」にする

ショッピングモール本部の影響を受けない路面店で、ヴィレヴァンの強みを伸ばす。いくつかの旗艦店を中心として、「現代における毒」を探し出し、うまくいった店舗が出てくればそれを他の路面店へと広げていき、かつてのヴィレヴァンらしさを復活させていくのだ。

ある種の軟着陸かもしれないが、すでにショッピングモール店舗が多数を占める現在における、現実的なプランではないか。

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もちろん、外野の人間がこのように書くのは簡単で、実際にこうした変化を起こすことは容易ではないだろう。権限委譲を強めることは、各店長の能力が高くないといけないという問題もあるが、そもそもが現代は人材不足の時代だ。権限を移譲したとて、「結果、似たような商品ラインナップになる」可能性もある。

しかし、現在同社が展開しているような、無際限にYouTuberやVTuberなどとコラボを続け、既存の顧客、あるいは潜在的にヴィレヴァンの顧客になる人々を減らし続けるよりは、ヴィレヴァンが持っていた「毒」を少しでも復活させる可能性に賭けたほうが良いのではと思う。

ちなみに、これは先日の記事では触れていなかったが、同社は新業態にもけっこう挑戦している。大人向けのライフスタイルショップである「new style」や、アウトレットショップである「VINTAGE VANGUARD(ヴィンテージヴァンガード)」などだ。

ただ、「new style」にはやはり毒が少ない気がするし、アウトレットショップは「なぜ文化を安売りする?」という気持ちになる。

もう一度、ヴィレヴァンの「良さ」を見直そう

ヴィレヴァンの異変は、上場企業になってから起こった、という声もSNSで聞こえてきた。やはり、上場企業ともなれば、株主との関係にも細心の注意を払う必要が出てくるから、かつてのような自由な店舗作りに制限がかかることはある。したがって、大胆な業態の変更やリブランディングは容易ではない。

しかし、前回の記事への反応が非常に多かったことを見れば、ヴィレヴァンの復活を望む潜在的な顧客も多くいるはずだ。もう一度、ヴィレヴァンの強みを見直し、そしてヴィレヴァンが持っていた「個店主義」的な側面を尊重して、顧客のニーズを徹底的に掘り下げるべきだと思う。

潜在的な顧客を見逃し、このまま進んでいけば、ヴィレヴァンは薄い「サブカル」を提供するだけの無機質な雑貨屋になってしまうだろう。

ヴィレヴァン
あのワクワク感を、もう一度…(筆者撮影)
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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