放射能土壌汚染に立ちすくむ、福島農業の期待と現実

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
放射能土壌汚染に立ちすくむ、福島農業の期待と現実

計画的避難地域に指定された福島県飯舘村。6月初旬、避難の準備に追われる農家では、置いていく農機具を守ろうとする光景が随所で見られた。60代のある男性は、コンバイン保管用の倉庫の入り口にトタンを打ち付けながら、「戻ってきたらすぐに再開できるように盗難から防ぎたい」と話す。

飯舘村の農業人口は就業人口4018人の約3分の1に上る。村では農機具の保管場所を設け、監視カメラも設置。住民ボランティア「いいたて全村見守り隊」も発足させた。9割超の住民が避難を終え役場機能は22日に近隣の飯野町に移転したが、今後も村のパトロールを実施。背景には村に戻り農業を再開したい、という住民の強い思いがある。

農地除染に巨額投資も効果はまるで読めず

現状、飯舘村の大気中の放射線量の公表値は毎時2マイクロシーベルト程度。ただ、これは放射性物質が雨などで流れやすいアスファルト上での計測値。放射性物質は土壌に吸着しやすく、6月に村内54カ所で行われた調査によると、最も高い地点では同15マイクロシーベルトを計測した。土壌中の汚染も深刻だ。農林水産省は、土壌中の放射性セシウムの検出値が1キログラム当たり5000ベクレルを超える水田での稲作を禁止しているが、飯舘村では最高で同2万8901ベクレルにも達した。

高汚染度地域の農地再生へ農水省も動き出した。5月末には「ふるさとへの帰還への取り組み」と呼ぶ土壌除染プロジェクトを開始。初日には鹿野道彦大臣自ら飯舘村を訪問し「土壌改良で成果を上げて再び営農ができるように全力を挙げる。今年度の2次補正、来年度予算でも関連経費が認められるように頑張る」と気勢を上げた。

対象は飯舘村以外にも13の自治体で、福島県の農地の3割弱に当たる2万6000ヘクタール(図)に上る。プロジェクトではまず、飯舘村などの田畑3ヘクタールに4・9億円を投じて8月中までに実証実験を実施。「効率的な除染方法を見つけるまでカネに糸目はつけない」(プロジェクトを担当する農水省の中谷誠・研究開発官)と意気込む。


関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事