放射能土壌汚染に立ちすくむ、福島農業の期待と現実


処理法なく見切り発車 行き場のない汚染土

仮に除染がうまくいったとしても、さらなる壁が立ちはだかる。世界初の試みゆえ、削り取った土壌やヒマワリなど除染用に栽培した作物の処理方法が確立していないのだ。13日の削り取り作業ではわずか8アールの土地から24立方メートルもの汚染土が出たが、処理のすべがなく農地近くに仮置きしたままとなっている。

行政に先駆けて処理法を模索する動きもある。セシウムの農作物への影響を研究する北海道大学の渡部敏裕助教は、放射能汚染物質の焼却技術を持つ企業に自ら協力を要請。興味を示す企業も少なからずある。が、飯舘村での実証実験の効果が判断できるまで農水省がプロジェクトの規模や予算を決めかねていることもあって、「参入後コストに見合うかわからず、本格的な取り組みに二の足を踏んでいる」(渡部助教)。

国による対策の先行きが見えない中、農家の苦闘は続く。ある農家では、作付けが許されている稲以外の作物の栽培を地道に続けるが、出荷できる保証はない。他県への移転を決心した農家もいる。農業は慢性的な人手不足で人材ニーズが高く、全国農業会議所が被災者の雇用を呼びかけたところ、6月中旬時点で全国374の法人、1012人の求人があった。ただ、現時点での福島県からの移転は10人程度。多くは今後の対策を見守っている。「農家は土地への愛着が強い。移転した人も『土地を捨てて逃げた』という罪悪感を抱えている」(農業会議所)。

飯舘村の管野典夫村長は移転先の役場の開所式で「2年間で戻ってきたい」と宣言。耕し慣れた土地に戻りたいという農家の期待は大きく、官民の協力による早急かつ最大限の取り組みが望まれる。

(麻田真衣 =週刊東洋経済2011年7月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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