南仏のマクドナルドを「不法占拠」した彼の"望み" 貧困・治安悪化の街の騒動がフランスで話題に

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店では近隣住民を積極的に採用している。周辺エリアの失業率は60%。働き先が見つかりにくいシングルマザーなどを中心に、地元の人たちに就労のチャンスを与えている。

それだけではない。毎週月曜日には700世帯分の食品を地元住民に配給している。一般的にファストフードといえば、「安い・早い・美味い」が売りだろう。しかし、この地域ではそれすら買えない人が大勢いるのだ。

「彼らは社会的に非常に不安定な状況にあり、(非常に不安定な状況や、深刻な生活苦に直面していることによる)深い悲しみの中にいます。そんな彼らに対して『助ける側』と『助けられる側』という上下関係のようなものを決して作ってはいけません」(カメルさん)

ラプレ・エム
食料の配給日に店を訪れる近隣住民(写真:ラプレ・エム提供)
ラプレ・エム
店の周りをぐるりと囲むように並ぶ列。これだけ多くの人が援助を必要とする状況下にあるサン・バルテレミ地区(写真:ラプレ・エム提供)

「Mのその後」の「M」の由来

そもそも、「Mのその後」の「M」とはなんだろう。

実は、かつてこの場所には世界最大のファストフードチェーン「マクドナルド」のサン・バルテレミ店があった。店のすぐ隣で麻薬の取引が恒常的に行われるような立地だが、地域で唯一安定した雇用を促し、住民の憩う数少ない場所としても機能していた。

ところが、経営は年々悪化の一途をたどる。その背景には、言わずもがなこの土地の特殊性があることは明らかだ。

2019年にはついに撤退を決められた。そのとき立ち上がったのが、マクドナルド・サン・バルテレミ店の従業員組合の代表だったカメルさんとその仲間たちだ。

ラプレ・エム
元マクドナルドの店員たちとともに映るカメルさん(中央の背の高い男性)。組合の代表として従業員を守るべく、企業との死闘を繰り広げていた(写真:ラプレ・エム提供)
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