南仏のマクドナルドを「不法占拠」した彼の"望み" 貧困・治安悪化の街の騒動がフランスで話題に

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彼らは「自分たちの雇用」を守ろうとしたのではない。ここを拠点にして、地域の住民たちに食料を配給するためだ。折しも時代はコロナ禍に突入。人々は感染だけでなく、飢餓の恐怖とも戦っていた。

そしてカメルさんらは最終手段に出た。なんと閉店したマクドナルドの店舗を不法占拠。違法と知りながら、決死の覚悟で自分たちの活動拠点を保持した。

元マクドナルド、起死回生プロジェクト

ラプレ・エム
建物の造りも、看板の“M”も、日本で馴染みの巨大チェーンそのもの。グローバリゼーションの片鱗とも見て取れる(写真:ラプレ・エム提供)
ラプレ・エム
ハッピー感はこちらに軍配が上がりそうなキッズメニューのボックス(写真:ラプレ・エム提供)

「Mのその後」という、不思議な店のネーミングの由来はここにある。「マクドナルドのその後」というわけだ。 

この不法占拠と住民への支援は地元メディアに取り上げられ、大きな反響を呼ぶ。徐々に地域のNPOなどの賛同を得て、同じ場所でファストフード店を再開するというプロジェクトが動き出した。

2020年にはマルセイユ市がこの店舗を買い取り、カメルさんらに貸し出すことに。こうして「〈地域住民のため〉ではなく〈地域住民とともに〉存在する店」ができあがった。

「お客様は神様」という概念はこの店には存在しない。経営者、従業員、ボランティア、客、そして貧困により客にはなれない地域住民も含めて、すべての人たちが平等だ。すべての人たちが団結し、助け合う世界がこの店の目標なのだ。

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