「庄や」役員に損害賠償、絶えない外食産業での過労死


80時間の“過労死ライン”経営判断か、命と健康か

これに対して大庄側は二審で「(中略)各店舗の店長や地域ごとの管理責任者による労働時間の把握によって安全配慮義務を果たすことが合理的である」と補充主張を行った。

二審は会社法上の責任に加え、現行の労働環境下で「(役員は)現実に従業員の多数が長時間労働に従事していることを認識していた(中略)にもかかわらず、控訴人会社(=大庄)にこれを放置させ是正するための措置を取らせていなかった」として、民法709条の「不法行為責任」も認める、一審よりも踏み込んだ判決を言い渡した。

元康さんが亡くなった当時から管理本部長を務める水野正嗣専務は「飲食業は季節や時間ごとの繁閑差が大きく、一定程度の時間外労働を認めざるをえない。現場の労働時間を役員が把握するのは難しく、今回の判決が通れば他業種の会社経営にも影響が及ぶ」と、納得しない。

一方、原告である、亡くなった元康さんの父、了さんは漏らす。「何でこんな会社に入れてしまったのかと思う。二審でも役員の責任が認められたことはうれしいが、本当は刑事裁判を起こしたいくらいだ」。

原告側の弁護士を務める松丸正氏は、「この判決は、過労死ラインを超える三六協定や賃金体系を取っている企業に対し、大きな警鐘を鳴らした」と指摘。厚生労働省が月80時間と定める“過労死ライン”を順守することの重要性を強調する。

二審の大阪高裁の判決はこう続く。三六協定や賃金体系の体制作りが「経営判断事項」とする大庄側に対し、「責任感のある誠実な経営者であれば、自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、(中略)義務があることは自明」とした。

09~10年度、精神障害なども含めた労災請求件数は、過去最高を更新した(図)。今回の判決は外食業界のみならず、日本企業全般に重い責任を突き付けたと言えそうだ。

 

 

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(二階堂遼馬 =週刊東洋経済2011年7月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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